ブランドX『モロカン・ロール』

モロカン・ロール(紙ジャケット仕様)

モロカン・ロール(紙ジャケット仕様)

フィル・コリンズが参加したことで注目を集めたグループが77年に発表した2作目です。アメリカのフュージョン・シーンに影響を受けているのは明らかですが、プログレ的な要素も混じった、ただ快適なだけではないサウンドになっているのが特徴。スタジオ・ライヴ一発録り、オーヴァーダブなしの2曲目「アイ・レンド・ユー・マイン」にそのことは顕著に表れていて、個々の演奏はバリバリに弾きまくっていても、全体的には空間の広がりが感じられ、神秘的でもある音が紡ぎだされているのに感心させられます。押すところと引くところをわきまえてる職人集団なんですね。もちろんテクニックの高さを存分に見せつける曲もあって、パーシー・ジョーンズのフレットレス・ベースが冴えまくる「マラガ・ヴィルゲン」がその代表曲。この曲に限らず、ジョーンズが産み出す不思議なベース・ラインは私がこのグループに感じる魅力の中心となっています。同時期に活躍していたフレットレス・ベースのプレイヤーといえばジャコ・パストリアスという巨星がいるわけですが、ジョーンズも負けず劣らずの技と個性を持った人だと思います。ジョン・グッドソールの流麗なギターや、ツボを押えた演奏で全体の空間を演出するロビン・ラムレーのキーボードも見事。もちろんフィル・コリンズの力強いドラムスもかっこいいですよ。
ジャケットはヒプノシスによるものですが、おそらく冒頭の「サン・イン・ザ・ナイト」にヒントを得ているのでしょう。シタールの響きに耳を惹かれるエキゾ色濃厚な異色作で、いっそのことこの路線でまるごと一枚つくっても面白かったかもしれません。もしかしたらブリティッシュフュージョン版『はらいそ』が生まれていたかも・・・時期的にも重なっているし(笑)。