インスタント・シトロン・ライヴ『jolie animation, neat kitchen, & little music! かわいいアニメーション、おいしいクッチーナ、ちいさな音楽の夕べ』at mona records

シトロン

<Introduction>
時に音楽、あるいはサッカー、はたまた栗原恵の魅力を熱く語るかと思いきや、一転「退屈」についての考察を叙する、幅広い話題を扱う魅力的な日記を書かれている「■日々常套句」のid:clicheさんとインスタント・シトロン初のワンマン・ライヴヘ行ってきました。
会場は下北沢のmona records。下北沢に行くのは久しぶり。10年以上足が遠のいていたところです。ドトール前で待ち合わせた後、開場まで時間があったので、clicheさんのご案内で「ONSA」へ。噂に聞いてはいましたが、ポスト・ロックエレクトロニカに徹した品ぞろえに感動しました。時間が近づいたので、monaへ向かうと既に行列が。周囲の人がいぶかしげに見ています。囲碁会館が同じビルの上の階にあったので、そこへ向かう列なのかと思われた方もいたようでした。


<Live >
会場はかなり小さくて、本当に60名以上の人数が入るかどうかすらも危ぶまれましたが、前の方の観客はぺたんと座り、横の長椅子なども隈なく人で埋まり、なんとか収まった様子。私とclicheさんは早速ビールを飲みながら、まったりとスクリーンに映し出されるアニメを眺めておりました。途中、犬が主人公のアニメが流れたのですが、これがかわいらしい絵でありながらなかなかサイケな色彩とシュールな展開を見せるもの。二人で「何気にやばいですね〜」などと語りつつあるところへ、ステージ後方から実にさりげなくメンバーが現れて、ステージが始まりました。
編成はウッド・ベースとパーカッションをサポートに、長瀬五郎さんのギター。片岡知子さんは基本的にはカメラの一脚を三本束ねてつくったという、「生まれたての仔馬のように不安定」(片岡談)な台に乗せたトイ・ピアノ を演奏。時にアコーディオンなどに持ち換えて歌っていました。驚いたのはまず、片岡さんの想像以上の可愛らしさと、あのキュートなウイスパー・ヴォイスは歌のときだけではなく、しゃべるときの声もそうだったこと。そして、とても来年結成10周年を迎えるとは思えない彼等のMCでした。まるで先週デビューしたばかりのような初々しさ。片岡さんは微笑みを見せながらも緊張の色は隠せませんでしたし、長瀬さんはとにかく「ドリンク、ドリンク!飲んでくださいね」しか言わなかった(笑)。でもそのぎこちないところが却って魅力となるところが彼等のいいところ。ライヴというよりも、友人のホーム・パーティーに招かれたような親密な雰囲気につつまれ、和やかに(これはこのイベントに終始一貫していたこと)ステージは進行していきました。
ステージを終えても、メンバーは楽屋(があったかどうかがそもそもウタガワしい)に下がるわけでもなく、CDショップのコーナーで談笑。数人のファンがサインを求めていたので、私も一緒にその中に混じり、片岡さんのサインを見事ゲットいたしました。片岡さんがここを読んでるわけありませんが、どうもありがとうございました。


<Animation>
今回のライヴにはVJとしてキスキスグラーフィカが参加。世界各地のレアなアニメを紹介するイベントを主催しているという彼等。ライヴの後はこの夜のために彼等が選んだショート・アニメが3本上映されました。
まずは日本の「3匹のこぐま」。これがいきなり笑えました。白黒ですがほのぼのとした絵。行方不明になった友達のアヒル君を探すこぐま達のお話なのですが、かなりシュールな展開と超ご都合主義のストーリー。それが淡々としたナレーションで平然と進行していくのがなんともユーモラスでした。
次はレア物、チップマンクス「ジャパニーズ・バナナ」。音源は昨年出たベスト盤に収録されていたので耳にしていましたが、典型的な「西洋人が日本風の音楽をやってみたらチャイニーズ風になりました」パターンの曲。アニメもしっかりそのパターンでした。冒頭の建物からして五重の塔なんだか、中華料理屋なんだかといったもので、ここまでいくと笑うしかないですね。
最後はフランスの、これは可愛いマペットもの。音楽はフランソワ・ルーベだったのですが、意外にもムーグものだったのでびっくり。


<animer impromptu >
さて、続いて本日のスペシャル企画。キスキスグラーフィカが用意したアニメーションに、インスタント・シトロンが即興的に音楽をつけていくという「アニメール・インプロンプチュ」です。即興といっても火花飛び散るものになるわけはなく、ベースが紡ぎだす太く柔らかいグルーヴにそれぞれが音を重ねていくといったパターンでファンシーな演奏。途中、ワルツになったところが良かったなあ。3回演奏したのですが、2回目からは会場に来ていた友人のミュージシャンも加わり、モンド風味が増した演奏になりました(ゲストのひとり、松前さんが「キミ達のは即興じゃないっ。即興とはノイズだ!」とわざとらしく言ったのには受けました)。


<Live 2>
そして最後のステージは、
長瀬「えー、最初の曲は片岡さんが部屋を掃除したら出てきたという・・・」
片岡「・・・それじゃまるで普段掃除していないみたい・・・」
長瀬「それじゃ、模様替えですね。そのとき出てきたデモ・テープの音源に重ねて演奏します」といった趣向ではじまりました。流れてきた音が、ずいぶん「渋谷系」ぽいので驚いていたら、ファンタスティック・プラスティック・マシーンの制作とのことで納得。その後数曲演奏して、イベントは終了しました。終わってみれば4時間の長丁場。しかし終始リラックスした中で進行したため、疲れを感じることなく過ごすことができました。片岡さんはしきりに「こういうことは、これが最後なので・・・」とおっしゃっていましたが、そんなこといわずに、これからも続けて欲しいですね。


最後になりましたが、clicheさんのお誘いがなければこのライブに私が行くことはありませんでした。チケットの予約等、お手間をかけさせてすみません。本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします!