セレクト合戦「男女ヴォーカル」特集
「男女ヴォーカル」をお題にして行われた第9回セレクト合戦。前回は英国フォークで統一感を狙ったのに対し、今回はビックリ箱路線。へんな曲をどこまで入れるか、かなり迷いました。大雑把にいうと前半はポップ、後半はヘンテコという流れです。
※Amazonに画像が掲載されていないものはジャケットを表示していません。
1)「さいざんすマンボ」巻上公一(1992)
収録アルバム「殺しのブルース」。ヒカシューの巻上公一が歌謡曲のカヴァーに挑んだ「超歌謡」アルバムの冒頭を飾る曲。インパクトの強さで、選曲にかかったときすぐ浮かんだ曲です。オリジナルはもちろんトニー谷と宮城まり子。こちらの女性ヴォーカルは東京ナミなる子がつとめています。アレンジは元ゲルニカの上野耕路。なおアルバムはジョン・ゾーンがプロデュースしているアヴァンギャルドで濃い作品。現在廃盤なのが残念。
2)「真空キッス」アポジー&ペリジー(1984)
オリジナル収録アルバムは「超時空コロダスタン旅行記」ですが、私は写真のテクノ歌謡のオムニバスから入れています。ロボットのアポジー&ペリジーが歌うという設定のYENレーベルの目玉企画。松本隆・細野晴臣の黄金コンビが曲を手がけ、歌は戸川純(ペリジー役)と三宅裕司(アポジー役)という豪華なキャストだったにもかかわらず、架空のユニットにしたことが裏目に出てセールス的には惨敗したそうです。しかし、90年代に入ってジム・オルークが大絶賛。日本人なら当然みんな知っているものと思って来日の際クラブでかけたら思いっきり引かれたそうな(笑)。前曲とはゲルニカつながり。
3)「ほらパパ見てよ」麻里圭子(1970)
収録アルバム「21世紀のこどもの歌」。1970年度芸術祭参加作品として発売。監修が小松左京で、星新一や筒井康隆、山下洋輔などが作家として参加しているのがすごいのですが、この曲の作曲者、宇野誠一郎がアープ・シンセイサイザーを用いたことで、日本初のシンセサイザー本格使用アルバムとして名高い一枚です。この曲に電子音は用いられていないのですが、グルーヴィーなリズムがかっこよく、宇野本人もお気に入りの曲です。作詞はなんと手塚治虫。
4)「Sweets」SPANK HAPPY(2002)
収録アルバム「Computer House Of Mode」。今の日本音楽界のトリック・スター、菊地成孔のポップ・ユニットがSPANK HAPPY。ここでのキュートなヴォーカルは家電OLだった岩澤瞳。残念ながら先日引退してしまい、つい最近3代目ヴォーカリストが決定してます。この曲はバック・トラックをキャプテン・ファンクが手がけ、かなりJ−POPに接近してますが、細かいビートとエロティックな歌詞(わざと男女のパートを逆にして歌っている)が彼等ならでは。
5)「シャ・ラ・ラ」つじあやの(2004)
収録アルバム「Covers」。原曲はもちろんサザンオールスターズ。男性ヴォーカルは奥田民生です。京都のウクレレ娘、つじあやののヴォーカルはいい感じに肩の力が抜けています。演奏では、小倉博和のペダル・スティールが素晴らしいですね。
6)「夢うつつ」AYUO/OHTA HIROMI(2004)
収録アルバム「Red Moon」。このあたりから後半戦。「AYUO」は高橋鮎生、「OHTA HIROMI」は太田裕美です。国内盤が出てないので、「和モノ」とすべきかどうか微妙(笑)。裕美さんを輸入盤で聴くことになるとは考えたこともありませんでした。鮎生がWah-Wahギターやシタール、オルガンなどを駆使してつくりあげた浮遊感あふれるサウンドに裕美さんのヴォーカルが映える一曲。
7)「花とおなじ」渚にて(2004)
収録アルバム「花とおなじ」。彼等もまたジム・オルークが絶賛しているバンド。徹底的なアナログ・レコーディングへのこだわりが期せずして音響派に通じるサウンドを生み出しているのがすごい。そして、ヴォーカルのまっすぐなこと!
8)「あたらしい 花」ASA-CHANG & 巡礼(2002)
収録アルバム「つぎねぷ」。今回の勝負曲です(笑)。巡礼はスカパラを脱退したASA-CHANGが結成したユニット。タブラトロニクスなるものを駆使して、音節単位にまで分解した言葉を歌うヴォーカル(こだま和文やSuparcarのmiki、ボアダムズのヨシミが参加)とタブラを同期させています。前作のタイトル・ナンバーをリメイクしたこの曲でリ・アレンジを手がけたのはレイ・ハラカミ。得意のピッチベンドを駆使したサウンドは歪んだ真珠のような美しさ。
9)「ちりぬるを〜たまき・浩二のおそばやさん〜」小西康陽starring 石坂浩二と緒川たまき(2003)
収録アルバム「SOB-A-MBIENT Music for your favorite soba shop」。今回の幹事を担当されたP5さんへのサービス曲です(笑)。「蕎麦屋で流れることを想定したアンビエント」をコンセプトとしたオムニバス・アルバムからの一曲。ふざけているようですが、ワールドスタンダードやヤン富田も参加しているあなどれない一枚です。これは小西さんがタモリのハナモゲラ歌謡「ソバヤ」をベースにしてつくりあげたもので、ふたりの何気ない会話が妙にエロティックに聞こえるのがミソですね。この曲、市川崑が監督したPVが制作されてます。試聴は↓で。
http://www.jvcmusic.co.jp/speedstar/soba/
10)「tokyo」The Books(2003)
収録アルバム「think of the lemon of pink」。さすがにこれを和モノというには無理があるかな?私の大好きなレーベル、トムラブからリリースされたエレクトロニカの佳作です。柔らかい響きとギターの絡みはそれだけでも充分聴かせるものですが、なぜか日本語のサンプリングをあちこちにちりばめているのがユニーク。どこから集めてきたんでしょうねえ。
11)「燕−rice terrace dreaming−」MICABOX feat.Ayako Takato(2004)
収録アルバム「ひねもす」。お神楽など、日本の伝統芸能を研究してきたMICABOXが作り出した、ありそでなかった和風エレクトロニカ。女性ヴォーカルは高遠彩子。細野晴臣がポスト・プロダクションを全面的に行っています。この曲は15年以上前からあたためていたという、アジア歌謡的メロディーを持った曲。リズムは「ゆるいニューオリンズ」だそうですよ、五條さん(笑)。
12)「sukiyaki」ディック・リー(1990)
収録アルバム「エイジア・メイジア」。女性ヴォーカルはサンディー。この曲が見つかったので、最初と最後を昭和歌謡でそろえることができました。いわずとしれた名曲です。ラップ部分の「You are my Sukiyaki,baby.Please be a Suki-Suki-yaki for me」が面白いですね。