9/3 カヒミ・カリィwith 大友良英, ジム・オルーク, 山本達久, 石橋英子@ビルボードライブ東京

およそ4年ぶりとなる新作『IT'S HERE』のレコ発ライヴへ行って来ました。
彼女のライヴに行くのは2007年の昭和女子大学人見記念講堂以来です。あのときのライヴはギターとドラムにチェロやハープ、笙などが加わった独特の編成。終始弱音で楽曲が演奏され、微細な音の粒子が静寂な空間に層を成していく様が印象的でした。
それに対して、今回の編成はぐっとシンプル。大友良英ジム・オルークは前回から引き続いての参加で、ドラムスの山本達久とピアノの石橋英子が新たに加わっていますが、見かけ上は普通のバンド編成と変わらない形になりました。では、ここで彼女たちが奏でた音楽は前回とは打って変わったものだったのか、というとそんなことはありません。バンド・サウンドでありながら前作の世界観を発展させた新たな世界が拡がっていたのです。メンバーそれぞれが、己や相手の放つ音の立ち上がりや空間に鋭敏に反応し、サウンド全体が大きく呼吸するようにうねっていくのが圧巻。大友や山本の演奏はフリーな即興にぐっと傾く瞬間が多々あったのですが、そのときはジムと石橋がさりげなくわかりやすいリフやコードを添えて、ギリギリのバランスで“ポップ・ミュージック”としての形を保っていくのが実にスリリングでした。そして、奔放なサウンドを吐息一つで己の世界に染め上げるカヒミのヴォーカルの存在感!
聴きどころが多くて、まとまりのある文章になりそうにないので、以下感じたことを思いつくままメモ風に記していきます。
・音量のダイナミクスが大きい演奏だったのにかえって静寂を強く意識させた。前回は静寂の中で奏でられた音楽。音は静寂から生まれ、静寂に包まれ、静寂の中に消えていくことを示したのが今回の音楽。
・大友のギターが実に美しかった。大音量で炸裂しても―いや、すればするほど、静寂がサウンドを包み込んでいくような気持ちになる。まるで澄み切った青空をひとり眺めているような・・・。
・多彩なパーカッションと独特の間をもった山本のドラムスは富樫雅彦を彷彿とさせた。今はもう叶わぬ夢だけど、カヒミ、大友、富樫のトリオによる演奏を聴いてみたかった。
・今回はサポートに徹した感のあるジム・オルークと石橋。だけどこの2人の演奏はサウンドに多用な色調を与えていた。

―などなど、とても刺激的なライヴでした。大友のつぶやきによると、このメンバーでのライヴ、残念ながら次回の予定が決っていないそうだけど、もったいないなあ!