4/18奇跡の歌声〜伊豆田洋之、ポール・マッカートニーを歌う@晴れたら空に豆まいて

それにしてもPerfume旋風が止まりませんね。これまでテクノ系が苦手だとおっしゃっていたRyoseiさんも周囲の勢いに押されて(?)ついに『GAME』を買ったそうですよ。 なるほどデイリーチャート1位になるのも納得です。
昨日はそのRyoseiさんからのお誘いで、伊豆田洋之がピアノとギターだけでポール・マッカートニーの曲を歌いまくるというライヴに行ってきました。この企画は元々ピカデリー・サーカスのライヴの幕間で伊豆田が披露していたポール・ナンバーを聴いたサエキけんぞうが「もっと聴きたい」と思ったことがきっかけとか。サエキはこの日も自ら司会を務める熱の入れようで、「伊豆田さんのカヴァーでこれまで苦手だった曲も良いと思えるようになった」と熱弁をふるい、会場を盛り上げました。


そしていよいよ主役の伊豆田登場。ピアノにそっと指を下ろします。開場前にRyoseiさんと「1曲目は何をやるのか」をあれこれ予想していたんですね。とはいえなにせヒット曲がいくらでもあるポール・マッカートニー。つかみとして有名なのをドン、とぶつけるのではと思ってもその有名な曲が多すぎて予想がつかない(笑)。しかし何かしら知っているのをやるだろうと思っていたら、あまり聞き覚えのないピアノのフレーズがしばらく続きました。これって即興かな?と首をかしげているうちに歌がスタート。確かに聴いたことはある曲だけどパッと曲名が出てこない・・・サビのところでようやく思い出しました。なんと「オンリー・ラヴ・リメインズ」!ビートルズでもウイングスでもなくて80年代の曲からスタートです。しかも決して評価が高いわけではないアルバム『プレス・トゥ・プレイ』からの選曲ですよ。さらに歌い終ってから伊豆田が言うには、最初のピアノ演奏は映画「レット・イット・ビー」の中でポールが弾いていた曲だったとのこと。何というこだわりぶり!冒頭の2曲だけで今宵はディープなポール祭りになることがはっきりと示されたのでありました。


ディープとはいっても、そこは相手がポール・マッカートニーですからマニアックなものにはなりません。「アイル・フォロー・ザ・サン」や「夢の人」といったビートルズ・ナンバーから、ウイングス「ユー・ゲイヴ・ミー・ジ・アンサー」や「イングリッシュ・ティー」のような最近のソロまで、ヒット曲もそうでない曲もどれも親しみやすい曲ばかりで、会場の雰囲気もとても和やかなものでした。いつの時代でもポールは一貫してポールであり続けたことが、シンプルな弾き語りによって浮き彫りになりましたね。前半の山場は「ゴールデン・スランバー」。ご存知『アビー・ロード』のメドレー中の1曲です。当初はこの曲だけを取り上げる予定で、続く「キャリー・ザット・ウェイト」へ入る直前で演奏を一旦は終えたのですが、会場から続きをやって欲しいという声があがります。伊豆田は「うーん、でもこれ(キャリー・ザット・ウェイト)一人じゃ盛り上がらないんですよ。皆さんも一緒に歌ってくれますか?」と呼びかけて演奏再開。もちろん会場全体で大合唱です。そしてなだれこむように「ジ・エンド」へ。さすがにリンゴのドラム・ソロの部分は会場の手拍子にまかせて(笑)演奏は休んでいましたが、その他の部分はドライヴ感あふれるピアノで完全再現!圧巻でした。

休憩の間はサエキと特別ゲストの杉真理松尾清憲によるトーク。脱線しまくりで(まあ、この3人が本気でポールを語ったら一晩は必要ですよね)、会場を爆笑の渦に巻き込んでいました。
第2部がスタートしても基本的には前半と同じで和やかなムードの中歌が続きます。「ヘイ・ジュード」ではもちろん最後のコーラスで観客大合唱。「皆さんが何も言わなくても歌ってくれるので、フェイクに専念できて気持ちよかった〜」と伊豆田もご満悦です。そしてもう一人の特別ゲスト、鈴木雄大が演奏に参加。『マッカートニー』収録曲「ザット・ウッド・ビー・サムシング」で渋いスライド・ギターを披露した後は、マイケル・ジャクソン役として「セイ・セイ・セイ」などの共作曲を続けて演奏。「ガール・イズ・マイン」ではエンディング近くのポールとマイケルの会話部分もしっかり2人で再現。このこだわりぶりがたまりませんね。マイケルの後はスティーヴィー・ワンダーに変身(笑)して、「エボニー・アンド・アイボリー」も歌ってくれました。
ステージ最後は杉と松尾も加わって、なぜかジョンの曲「ノーホエア・マン」と「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を演奏。これまでずっとポール役だった伊豆田がここではジョンのパートを歌うといった趣向をこらしていました。アンコールではサエキも参加して「心のラヴ・ソング」。客席も一緒に「アーイ・ラーヴ・ユー〜♪」と盛り上がったのはいうまでもありません。そして締めは伊豆田の弾き語り「ウォーム・アンド・ビューティフル」でしっとりと幕を閉じました。

いい曲がてんこもりで大変楽しいライヴでした。伊豆田の歌唱は声質はもちろん、ポール特有の節回しの細かいところまで再現した見事なものだったのですが、驚くべきは「モノマネ」感が全く無かったこと。“大好きな曲を自然に歌ったら結果としてポールに似ていた”とでもいいましょうか。ポールの雰囲気を濃厚に出しつつも、ちゃんと伊豆田自身の音楽になっていたのです。奇しくもこの日は伊豆田の誕生日。誕生日に大好きなアーティストの曲を心ゆくまで歌えるなんて歌手冥利につきるのでは、と思いながら帰途につきました。全部で30曲近く歌ってくれたのですが、まだまだ歌われなかった名曲は山程あります。ぜひ「目指せ、ラスベガス!」(サエキ談)の精神でこのシリーズ、続けて欲しいですね。