V.A「Stay Awake: Various Interpretations of Music from Vintage Disney Films」produced by HAL WILLNER

ステイ・アウェイク


ディズニーのカヴァー・アルバムやトリビュート・アルバムは数あれど、その絶妙な人選と完成度で群をぬくのがこのハル・ウィルナーがプロデュースした作品。ハルにとってもニーノ・ロータセロニアス・モンク、クルト・ワイルと続いてきた一連のトリビュートものの最高傑作ではないかと思います。


その人選を書いていくだけでスペースがたっぷり埋まってしまいそうですが、ナタリー・マーチャントとローチェスが「バンビ」の中の曲「4月の雨」を可憐に歌えば、ロス・ロボスジャングル・ブック「君になりたい」を彼ら得意のスタイルで決めてくれる。ボニー・レイットがウォズを従えてしっとりと子守唄を聴かせた後に出てくるトム・ウェイツの「ハイ・ホー」は、チャド・ブレイクの特異な音響処理が全開。地底の底から聴こえてくるような怪作になりました。ちょっと飛ばして、アーロン・ネヴィルは一人多重録音のコーラスで「ミッキー・マウス・マーチ」をバラードに。サポートするのはドクター・ジョンメリー・ポピンズからの小品をガース・ハドソンがアコーディオンでしみじみ奏で、続くNRBQもいい味出してます。


・・・このように挙げていくとキリがありませんが、最大の目玉はサン・ラ・アーケストラとニルソンの参加でしょう。サン・ラにディズニーのカヴァーをさせるという発想と実現した実行力がすごい。そしてニルソンの「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」のバッキングのクレジットにはアート・リンゼイとピーター・シェラーの名前が・・・すなわちニルソン・ミーツ・アンビシャス・ラヴァーズ!まさしく一期一会の組み合わせですねえ。そして最後を締めるはリンゴ・スターとハーブ・アルバートの組み合わせ。ビートルズ「ホワイト・アルバム」の幕を閉じた「グッド・ナイト」を彷彿させるほのぼのとしたリンゴの歌で、全てめでたしめでたしといった気分になります。なおヴァン・ダイク・パークスがアソシエイト・プロデューサーとして協力。アルバム全体はギル・エヴァンスの思い出に捧げられていることも銘記しておかなくてはならないでしょう。突飛な組み合わせがマジカルな効果を挙げているこのアルバムは、まさしくギルが得意としてきたサウンド・マジックの方法論に通じているのです。