パスカル・コムラード「ハイク・ド・ピアノ」

huraibou2005-10-27

クリンペライとかアマカシノカなど、フランスにはおもちゃの楽器などを使って風変わりだけど愛らしい音楽をやり続けている音楽家がいますが、パスカル・コムラードもその一人。時に“現代のサティ”と呼ばれることもある彼ですが、今回取り上げたアルバムはその異名に最も似つかわしい作品といえるかもしれません。
グランド・ピアノとトイ・ピアノだけで録音されたこのアルバム、「ハイク」と名づけただけあって35分足らずの収録時間なのに25曲も詰め込まれています。最長の曲でも3分ちょっと、ほとんどが1分台という小品ばかりですが、パスカル・コムラードはトイ・ピアノの愛らしい音色とグランドピアノの落ち着いた音色を巧みに使い分けてうまく変化を出しています。


それ以上にこのアルバムを多彩なものにしている要素はカヴァー曲にあります。たった10秒で終わってしまうディープ・パープル「スモーク・オン・ザ・ウォーター」をはじめとして、ジョナサン・リッチマンロバート・ワイアットブライアン・イーノファウスト、スーサイドといった凝りまくった人選に加え、ジャズや映画音楽の分野からチャールズ・ミンガス、エンリオ・モリコーネニーノ・ロータまで繰り出しています。もはや多彩を通り越して支離滅裂スレスレですが、それらが自作曲と並んで平然とアルバムの中に納まっているのがすごい。そして感心するのは“狙った”ようには感じられないことです。トイ・ピアノのチャーミングだけど、どこかおマヌケ感のある響きにだまされているのでしょうか。それはそれで構いませんけどね。