久保田麻琴『On The Border』

ON THE BORDER

ON THE BORDER

先日のあがた森魚のコンサートにも参加していた久保田麻琴、2000年のソロ・アルバム。あがたがコンサートの1曲目で歌った「Mezcal」が収録されているので、久々に引っ張り出して楽しんでいます。
久保田に即して言えば、前年の1999年に細野晴臣と組んで出した『ルイジアナ珍道中』が大きなターニング・ポイントとなっています。この後細野は鈴木茂林立夫と組んでティン・パン名義のアルバムを発表。一方、久保田が発表したのが本作です。どちらの作品も『ルイジアナ珍道中』を発展させたものとして捉えることができますが、やや抽象的な感触のあるティン・パンに対してこちらは久保田のアメリカ音楽探訪の成果がストレートに表現されています。両作に共通して収録されている「Bon Temps Rouler」を聴き比べてみれば違いがはっきりとわかるでしょう。小坂忠のヴォーカルで味わい深く聴かせるティン・パンに対して、ケイジャン・フレーバー満載で陽気に歌う久保田。どちらも好きなのですが、楽しさがはっきり伝わるのは久保田版の方ですね。『ルイジアナ珍道中』で久々にリード・ヴォーカルを取った久保田が歌う楽しさに目覚めたのか、本作では実にリラックスした歌をたっぷりと聴かせてくれるのです。ウッドストックケイジャンニュー・オリンズで録音されたこのアルバムは、まるでヴァン・ダイク・パークスライ・クーダーの良いとこどりのよう、と書こうとしたのですが、1曲目のアラン・トゥーサンのカバー「オカペラ」はヴァン・ダイク・パークスが『ディスカヴァー・アメリカ』で取り上げていた曲なのでした。答えは最初からズバッと示されていたのですね。