2/22 あがた森魚とZipang Boyz號の一夜『惑星漂流60周年』in東京@九段会館

地球という名の惑星をコロガリ続け、漂い続けて60年のあがた森魚。その航海はいまだ継続中なれど、この夜は多くの同士(クルー)と共にこれまでの軌跡の集大成をたっぷりと見せてくれました。
まず前半は、武川雅寛、駒沢裕城、久保田麻琴浜口茂外也、徳武弘文等がバックを務めました。久保田がいるためかどの曲にもトロピカルな風が吹き、浜口のしなやかなドラミングとあいまって軽やかなグルーヴをもたらしていました。主役のあがたも不思議なステップを踏みながら心地よさげにのびのびと歌います。ヴァージンVS時代の「サブマリン」や「デパートメント・ストア」を披露してくれたのが個人的にはうれしかったところ。スペシャル・ゲストの矢野“ジャパニーズ・ガール”顕子もマドラスっぽい衣装で登場し、素敵なデュオを聴かせてくれました。「リラのホテル」では作曲者のかしぶち哲郎がそっと現れドラムを叩き、終わると静かに退場していったのも印象に残っています。
バカボン鈴木が登場してコントラバスを演奏した弾き語りコーナーを挟み、後半は鈴木慶一、和田博巳、渡辺勝、本多信介、かしぶち哲郎らの元はちみつぱいのメンバーが登場。「塀の上で」や「ぼくの幸せ」辺りをやってくれないかな?とちょっと期待したのですが、この日の彼らはあくまで船乗り員としてあがた船長のサポートに徹しました。もちろんこれはこれで何の不満もありません。前半のしなやかなグルーヴから一転、コクのあるずっしりとしたバンド・サウンドを堪能させてくれました。真っ赤なドレスに身を包んだ緑摩子が「最后のダンスステップ」で♪踊りましょう〜とデュエットするなど、次々と目の前に現れる光景に目がクラクラ。特に「佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど」のスケールの大きな演奏に胸打たれました。自分史を語ることがそのまま20世紀を振り返ることにつながり、果ては宇宙全体をノスタルジアで浸していく様は圧巻のひと言。「地上とは思い出ならずや」の名言を残した稲垣足穂の申し子たる、あがた森魚の真骨頂ここにあり、の名演でした。
他にも名曲、名演がつるべ打ちだった3時間。その楽しさ、素晴らしさはとても書ききれるものではありませんが、バンドを最初から最後までぐいぐい引っ張っていた武川雅寛の大活躍は記しておかねばなりません。オーラスはステージに全員集合して「大寒町」。慶一、アッコちゃん、あがたがこれまでの歩みを確かめるように歌をつないでいく姿はこの一夜の締めくくりにふさわしい感動的なものでした。