スサンナ・アンド・ザ・マジカル・オーケストラ『メロディ・マウンテン』

Melody Mountain

Melody Mountain

1997年に創設されたノルウェーのルーネ・グラモフォン・レーベルはエレクトロニカとジャズが融合したような音楽を数多くリリースしているレーベルですが、その中にあっては異色のヴォーカル・ユニットがスサンナ・アンド・ザ・マジカル・オーケストラです。“マジカル・オーケストラ”といってもメンバーはヴォーカルのスサンナ・カロリーナ・ヴァルムルーとキーボードのモッテン・クヴェニルの2人だけ。しかも華麗なサウンドどころか、ギリギリまで音を絞り込んだアレンジによる静謐な音世界が彼らの特徴です。まるで静寂こそが音楽の魔法である、と訴えているかのよう。


このアルバムは2ndにあたるカヴァー・アルバムです。全曲がスロー・バラードで、スサンナのちょっとハスキーな物寂しい声とモッテンの繊細なキーボードによる、シンプルだけど充実した“うた”の数々。CDをプレーヤーにかけて、1曲目のレナード・コーエン「ハレルヤ」が流れてくると、ふっと周囲のざわめきが鎮まっていくような錯覚におそわれます。以下AC/DC「イッツ・ア・ロング・ウェイ・トゥ・ザ・トップ」、プリンス「コンディション・オブ・ザ・ハート」、ジョイ・ディヴィジョン「ラヴ・ウィル・ティア・アス・アパート」、KISS「クレイジー・ナイツ」、ボブ・ディラン「くよくよするなよ」、スコット・ウォーカー「イッツ・レイニング・デイ」といった曲が歌われていくのですが、ジャンルも音楽性のバラバラなアーティストの楽曲が“静寂”をキーワードに違和感なく1枚のアルバムに収まっているのがすごい。ディペッシュ・モード「エンジョイ・サイレンス」も収録されていますが、このタイトル、まさに彼らの音楽性を象徴しているかのようではありませんか。そして最後に出てくるのがフェアポート・コンヴェンション時代のサンディ・デニーの名曲「フォザリンゲイ」!オルガンの響きにのせて切々と歌うスサンナのヴォーカルがたまらない。もう「おそれいりました」というしかありませんね。


You Tubeに1曲彼らの映像がありました。

Love will tear us apart