Paul Buchanan『Mid Air』

Mid Air

Mid Air

ブルー・ナイルのフロントマン、ポール・ブキャナン初のソロ・アルバム。もともとブルー・ナイルは寡作で知られるグループです。前作『High』は2004年、その前の『Peace at Last』は1996年と8年のスパンでぽつりぽつりとアルバムをリリースしていました。音楽シーンの表面的な狂騒から遠く離れたところで届けられる彼らの音は、超然としているようでありながら、寄る辺なさと憂いに満ちており、聴く人の心の奥深くしみとおっていくな響きをもっていました。
このソロ・アルバムでもこうした基本的な特長に変わりはありません。むしろパーソナルな色彩が濃くなった分だけ、その憂いは一層深まったといえるでしょう。ほとんどの曲がピアノの伴奏だけをバックにして歌われ、いくつかの曲で消え入るかのような淡いストリングスが加わるだけのシンプルこの上ない音楽。ヴォーカルも声を張り上げることなく、哀しみを湛えるように、また時には祈りのように密やかに歌っています。これまでのブルー・ナイルの作品がそうであったように、このアルバムもまた私にとってかげがえのない音楽になるでしょう。