ブライアン・フェリー『ディラネスク』

ディラネスク

ディラネスク

全曲ボブ・ディランのカヴァー。これまでのフェリーのソロを聴いているファンには、いつかはやるんじゃないかと思っていた人も多いと思います。一見意外な取り合わせのように見えますが、1stソロ『愚かなり、わが恋』で「激しい雨が降る」、2nd『アナザー・タイム・アナザー・プレイス』では「悲しきベイブ」と初期から既にディランの曲を取り上げているんですね。前作『フランティック』でも「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ・ベイビー・ブルー」と「くよくよするなよ」をやっていました。


初期のカヴァーはどちらかというと“あの歌い方でディランを歌う”というミスマッチの面白さ・・・フェリー的言い回しだと、ポップ・アートの方法論によるカヴァー、要するに「リ・メイク/リ・モデル」*1的側面が濃かったのですが、『フランティック』でのカヴァーは本当にディランの曲が好きでやってるんだなということを納得させるものでした。今回のアルバムも『フランティック』の路線の延長線上にあります。クリス・スペディング(g)、ポール・キャラック(org)、アンディ・ニューマーク(ds)といった渋いメンバーによるバンド・サウンドを中心に据えた音づくりはことさらに奇を衒ったものではないですが、そのスタイリッシュな佇まいはまごうことなきフェリー・サウンド(ミックスを手がけたボブ・クリアマウンテンの貢献も大きいと思います)。昔に比べるとすっかり枯れたヴォーカルがディランの曲にぴったりとはまっています。そして所々で聴けるフェリー自身によるハーモニカがいい味出しているんですよ。「イフ・ノット・フォー・ユー」でイーノ、「見張り塔からずっと」でロビン・トロワーが参加しているのも興味深いところ。個人的には「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」のようなスロー・ナンバーが特に気に入っています。

You Tubeで見る『ディラネスク』


All Along The Watchtower


Just Like Tom Thumb's Blues


positively 4th street


To Make You Feel My Love

おまけ(1973年当時のカヴァー)


A HARD RAIN'S A-GONNA FALL

*1:ロキシー・ミュージック1stの冒頭を飾る、初期ロキシーの方法論を象徴する楽曲