アート・リンゼイ「曖昧な存在」(ASIN:B00005G5KB)

曖昧な存在


DNAから始まって、ラウンジ・リザーズ、アンビシャス・ラヴァーズそしてソロに至るまで、この人の作品には外れがありません。プロデューサーとしてもカエターノ・ヴェローゾ等優れた作品を次々と送り出している、私が最も信頼しているアーティストのひとりであります。そんな才人の1stソロはノイズ・ギターはひとまず置いて*1、歌に専念したボサノヴァ色の濃いものとなりました。参加したメンバーはヴィニシウス・カントゥアリア、メルヴィン・ギブス、マーク・リボー、ブライアン・イーノ、元チボ・マットの本田ユカ、坂本龍一、ナナ・ヴァスコンセロス、テイ・トーワ等といった顔ぶれ。一見穏やかで抑制されたようにみえて、ピンとした緊張感が常に張り詰めている音楽で、アートのヴォーカルもどこか神経質な感触があります。元々ボサノヴァはテンションの高い音楽ですが、その部分を拡大したように聴こえます。これがアートの言う「ニューヨーク的」なものなのでしょうか。氷の中で燃えている炎のような美しさにひきつけられずにはいられません。この後アートのソロは少しづつヒップ・ホップやノイズなどの要素を盛り込みながら進化していきますが、この1stで聴くことのできる美しさは常に底流として流れていると思います。そんな意味からもこのアルバムはアートの歩みを押さえる上で不可欠といえるのでは。ちなみにゲイシャ・ガールズ*2に提供した「ノメソタケ」のセルフ・カヴァーも収録。

*1:一部使用してます

*2:あまり面白くなかったですね