ブライアン・オーガー・アンド・ザ・トリニティ『オープン』

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一気に紙ジャケで再発されたブライアン・オーガーの諸作品。70年代になってからのフュージョン色濃いオブリオン・エクスプレス時代の作品も聴き応えありますが、個人的にはその前身であるトリニティの作品に惹かれます。60年代後半に自分のことをクールでヒップだと意識していた若者は、こういう音楽を聴いていたんじゃないかと思わせるカッコよさがあるんですね。


『オープン』は彼らの記念すべきデビュー・アルバムで67年発表。ほとんどスタジオ・ライヴに近い形で録音された作品で、演奏にも熱気を感じます。マネージャーのジョルジョ・ゴメルスキーが、ヴォーカルのジュリー・ドリスコールにスポットを当てて売り出そうとしたため、前半はオーガーのオルガンが活躍するインスト・ナンバー中心、後半はジュリー・ドリスコールのヴォーカル・ナンバー中心となっています。ドノヴァン「魔女の季節」をカヴァーしているのも個人的にはうれしいところ。当時の彼らは同時代の有名曲・話題曲をてらいもなくカヴァーしていますが(ビートルズ「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」やドアーズ「ライト・マイ・ファイア」など)、それが“時代の空気”を音盤の中に閉じ込めているようで、聴いていると自分が当時のロンドンのストリートを闊歩しているような気分になれます。


この後彼らは、オーガーのソロ・アルバム的な2nd『ディフィニットリー・ホワット』を挟み、LP2枚組の大作3rdアルバム『ストリート・ノイズ』を発表。代表作はなんといってもその『ストリート・ノイズ』ですが、ジャズ・ロックなビートを背にひきまくるオーガーのオルガン、ハスキーで力強いドリスコールのヴォーカルの魅力は既に今回取り上げた1stで存分に発揮されています。初めて彼らの音楽に接する人はこのアルバムから聴き始めた方が2人の個性がつかみやすくていいかもしれませんね。