スティーヴ・ドブロゴス『ゴールデン・スランバーズ』

Golden Slumbers

Golden Slumbers

ティーヴ・ドブロゴスはアメリカ出身のピアニストであり作曲家です。夭折したノルウェーのヴォーカリストである、ラドカ・トネフの作品『フェアリーテイル』に参加したことでジャズ・ピアニストとして高い評価を受けました。『フェアリーテイル』はかつて私も取り上げたことがありますが、ラドカ・トネフの歌を控えめながらリリカルな伴奏で支えたドブロゴスのピアノも印象的なアルバムでした。その後のドブロゴスはジャズにとどまらず、クラシックの分野でも活躍を続け、ミサ曲やレクイエムなどの作品も残しています。
このアルバムはそんな多彩な音楽性をもつ彼が、ピアニストとしてビートルズの曲に向かい合ったもの。ECMでおなじみのレインボー・スタジオで録音されたせいもあってか、その静謐なアプローチにはECMが生んだ数々のピアノ・ソロのアルバムに通じるものを感じます。スティーヴ・キューンの叙情性とポール・ブレイの思索性を併せ持っている・・・というのは少々大げさでしょうか。ビートルズの曲がもつ美しさの核にあたるものを探っているかのような演奏に聴こえました。