小泉今日子「afropia」

アフロピア

なんてったってKYON2です。このころの小泉今日子はすごかった。アイドルであり、「CMの女王」と異名をとる人気ぶりで老若男女問わず広い支持をうけていました。歌の方でもシングル・ヒットを連発しながらも、アルバムでは様々な音楽的試みを行い音楽好きもうならせていたのです。アイドルがアーティストを目指すといって作詞をするのはよくあること。小泉今日子も大半の曲の詞を自分で書いています。安直に自分探しなどに走らない、その透明な言葉使いはなかなかのものだと思うのですが、彼女がすごいのは作詞だけにとどまらなかったこと。87年の『HIPPIES』以来、彼女のアルバムには「producer:Kyoko Koizumi」とクレジットされるようになります。プロデューサーですよプロデューサー。当時ようやくプロデューサー買いをはじめたばかりで、ダニエル・ラノワだヒュー・パジャムだと騒いでいた私にとって、アイドルが自分のアルバムをセルフ・プロデュースするというのは、かなり驚きでした。ファンとはいえ「ホントに自分でやってるの?」なんてウタガイの眼でみたりして。結局はこうして10年以上経っても聴き続けているアルバムを生み出したわけですから、今では私の中では名プロデューサーのひとりですよ、ホントに。
そろそろ本題に入らないと。この「afropia」は彼女のアルバムの中で個人的に最も気に入っている一枚です。近田春夫による歌謡ハウス「KOIZUMI IN THE HOUSE」、藤原ヒロシ屋敷豪太によるクラブ・ミュージック「NO.17」ときて、次は何?と注目していたときにこのタイトルを見たときは、今度はワールド・ミュージックかと思いました。確かにEBBYやOTOなど元JAGATARAのメンバーが参加した曲が多くを占めますが、前2作のように強力に自己主張をするサウンドではなく、練られていながらもやや控え目にしている印象です。また、大ヒットとなった「あなたに会えてよかった」や、鈴木祥子曲「あなたがいた季節」などポップス系のナンバーも収録。5分以上の比較的長く、ゆったりした曲が多くて全体の印象もリラックスした感じ。今なら「癒し系」なんて(イヤな言葉)呼ばれてしまいそうな作品です。曲、サウンドの上質さもさることながら、彼女のヴォーカルがいいです。ファンとはいえ彼女が歌が上手いなんて思ってはいませんが、柔らかく、少しひんやりした声質は、聴いていて疲れないんですよね。彼女のヴォーカルの魅力について高く評価しているのは自分の知る限り評論家の渡辺享氏ぐらいなのですが、私にとってこの「afropia」は優れたヴォーカル・アルバムでもあるのです。
今年、久しぶりに出したオリジナル・アルバム「厚木IC」でもその声の魅力は健在でした。これからもマイ・ペースでいいから音楽活動を続けて欲しいですね。