3/3 A級順位戦最終戦〜将棋界の一番長い日〜

昨日はA級順位戦終戦の一斉対局がありました。23時からのTV中継に備えて、帰宅後そそくさと食事、入浴を済ませ、ネットの「名人戦棋譜速報」で戦況をチェック。ところがほどなくしてサーバートラブルで画面が固まってしまいました。降級ピンチの谷川九段はあの攻めを勝利に結びつけられたのだろうか、などどそわそわしながらじっと中継を待つ一手。
ようやく中継開始。なんと放送前に谷川九段vs鈴木八段戦は終了していて、谷川九段が見事勝利し残留を決めました。棋譜を見てみたら、相振り飛車から鮮やかな桂捨てを放ち、最後は“光速の寄せ”で勝利。谷川九段らしい華麗な勝ち方でした。鈴木八段はA級復帰を果たしたものの、あえなく陥落が決定。鈴木八段の棋書の愛読者としては残念ですが、今回は谷川九段が勝って安心したというのが正直なところです。さて、中継は渡辺竜王と山崎七段が軽妙な掛け合いによる解説で楽しませてくれた後、終盤に強い“スーパーあつし君”こと宮田五段が登場。ただ、あまりこういう解説には慣れていないのか、不思議な挙動が目立ちました。渡辺竜王や山崎七段が彼の鋭い読みを引き出そうとあれこれがんばっていたのが面白かったです。
そうしているうちにも戦いは進む。まずは森内九段が石田流で三浦八段に勝利。三浦八段この時点で降級のピンチとなりました。勝てば名人挑戦のプレーオフの可能性が残る佐藤棋王は藤井九段と対局。最近藤井九段が連採している矢倉早囲いに対して、序盤でポイントを奪い、馬と成香をつくりリードします。この局面、強い人から見れば佐藤棋王優勢なのでしょうが、私のようなヘボ同士が指すと囲いが完成している藤井側の方が勝つような気がしますね(^^;)。結果は佐藤棋王勝ち。名人挑戦の目を残しました。
さあ、名人挑戦争いの大一番郷田九段vs木村八段戦。木村八段が勝てば郷田・木村・佐藤によるプレーオフとなります。夕食休憩辺りまでは両者がっぷり四つの互角の形勢だったと思うのですが、徐々に郷田九段が優位を築き上げてきました。放送開始時点でははっきり郷田九段優勢。木村八段は上着を脱ぎ、シャツの袖をまくって険しい表情で読みに耽ります。そして頑強な粘りの手を次々と放つのですが、郷田九段は落ち着いたもの。時にはがっちりと反撃を受け止め、また時には激しく攻め込むと緩急自在の堂々たる指し回しで木村八段を振り切って勝利。名人位挑戦権を見事獲得しました。
残るは特別対局室の深浦王位vs丸山九段戦。王位戦では羽生挑戦者を退け、現在羽生王将に挑戦している王将戦でもタイトル獲得にリーチをかけている深浦王位の強さは誰もが認めるところでしょう。ところがこの順位戦では大苦戦。負けるとタイトルホルダー初の降級という事態になってしまいます。相手の丸山九段は、この一戦になんとゴキゲン中飛車を初披露。深浦王位が馬を2枚、丸山九段が龍を2枚つくりあうという大激闘となりましたが、深浦王位必死の反撃を振り切り丸山九段勝利。深浦王位、無念の降級です。投了直前の青ざめた表情が忘れられません。終わってみればB1から昇級してきた深浦、鈴木が逆戻りという結果となり、A級常連組の層の厚さを見せつけた格好となりました。深浦王位はもちろんのこと、鈴木八段も決して実力的に他の面々に劣っているわけではないのですが、いやはや実に恐ろしい世界です。この結果、来期はB級1組がものすごい激戦区になりますね。もしかしたら、深浦、鈴木に加え、久保八段や行方八段といったA級経験者がひしめきあうことになるので、これは毎年A級昇級を期待されている渡辺竜王といえども、勝ち抜くのは容易ではなさそうです。