武川雅寛『dregs of dreams』

dregs of dreams

dregs of dreams

そうそう、こんなアルバムを聴きたかったんだよ、くじらさん!と喝采したくなりました。ムーンライダーズのヴァイオリニスト、武川雅寛4作目となるソロアルバムは企画色が濃かった過去3作とは異なり、武川のヴォーカルを中心とした快作です。
まずロック、セカンドライン・ファンク、レゲエ調と弾むようなリズムに乗って、武川ならではのおおらかな世界が広がる出だしの3曲でぐっと惹きつけられます。そしてはちみつぱいのカヴァー「月夜のドライブ」を挟んで展開される、繊細で無国籍色の強い楽曲群もやはり武川ならではの世界。梅津和時と共演したインスト・ナンバー「Violette of Sophia」では初期ムーンライダーズの名カヴァー「ウスクダラ」を彷彿とさせるメロディーが出てきて思わずニヤリとさせられました。いつもは名バイ・プレイヤーとしての活躍が目立つ武川ですが、本作では多数のゲストを招いているものの、決して埋没することはなく、主役としての存在感をしっかりと放っています。朗々としたヴォーカル、常に楽曲を生かす的確なフレーズを奏でるヴァイオリン、どこか懐かしい哀愁を醸し出すトランペット・・・これらが絶妙に溶け合って生まれる広くて深い音楽。でも堅苦しいところはみじんもなく、「やりたいことをやったら自然にこうなったんだよ」と微笑んでいる武川の姿が聴いていると自然に浮かんでくるのが本作の最大の魅力だと思います。