5/15 Sense of“Quiet” カルロス・アギーレ with キケ・シネシ、青葉市子@草月ホール

鎌倉・東京で3日間にわたって開催されたイベント“Sense of Quiet”。その2日目に草月ホールで行われた青葉市子とカルロス・アギーレ&キケ・シネシのコンサートに行ってきました。どちらも生演奏を見るのは2回目になります。

青葉市子を最初に見たのは2010年。日比谷野外大音楽堂での“Springfields”のオープニング・アクトで出演したときでした。当時の日記を読み返してみたのですが、その透明感のある歌声に好感は抱いていたものの、この時点では彼女の真の魅力に気がついていなかったことがわかります。いやはや己の不明を恥じるばかりですね。その後アルバムを聴いたり、Ustreamでの中継に接したりすることで急速に惹かれていきました。
カルロス・アギーレを初めて見たのも同じ2010年の初来日公演のときで、これは深く心に響いたコンサートでした。このときは単独公演でしたが、今回はギタリスト、キケ・シネシとの共演。どのような音楽を奏でてくれるのか期待に胸をふくらませて会場に赴きました。

開演時間となり、まずは青葉市子のステージ。ギターの弾き語りというスタイルはいつもと変わらないものでしたが、表現の強さが2年前と比べて一段と向上しているという印象を受けました。凛とした透明感のある歌声と独特の世界観をもった歌詞。そして決してありきたりな伴奏パターンにならないギター。この両者の織り成すコンビネーションは静けさの中にも高い緊張感を感じさせるスリリングなものでした。優れた個性をもつ、弾き語りスタイルの女性シンガー・ソングライターは近年とても増えてきたように思いますが、その中にあって青葉市子がひときわ存在感を感じさせるのは、こうした歌とギターの関係によるところが大きいと思います。いつか他のミュージシャンをバックにして歌うこともあるでしょうが、もうしばらくはこの歌とギターだけの世界を追求していって欲しいですね。

休憩をはさんで、いよいよカルロス・アギーレとキケ・シネシのステージです。前回の単独公演ではなによりも音楽を、音を慈しむカルロスの姿勢にうたれました。今回ももちろんその姿勢は変わっていないのですが、それに加えて信頼できる仲間と一緒に音を奏でる歓びが音そのものにも、ステージ上での表情、立ち居振る舞いからも溢れ出していました。キケの方も同様で、彼はカルロスほど感情を表に出すタイプではないのですが、その穏やかな表情からふとこぼれる微笑みや、ギターの音からはやはり音楽の歓びがはっきりと伝わってきたのです。ラテン・ミュージックの躍動感、ジャズ的なインタープレイ、クラシックの室内楽に通じる繊細なハーモニーが滑らかに溶け合い、気品を保ちながらも親しみやすさを失わない2人の演奏に、ただ陶然とするばかりでした。前回の公演に勝るとも劣らない幸福な空気が会場を包み込み、最後はスタンディングオベーションで終了。いつまでもこの音楽を聴き続けていたいと思わせてくれた素晴らしいコンサートでした。