1/21 ジョン・ゾーンズ・コブラ 新春ダイナマイト部隊@渋谷La mama

今年の初ライヴでした。「コブラ」はジョン・ゾーンが創案した、ゲームの要素を取り入れた即興演奏システムです。19枚のカードを持ったプロンプターを演奏者が半円状に囲んで、プロンプターが出したカードの指示に従って演奏を展開していくのですが、プロンプターから演奏者へ一方通行に指示が行くのではなくて、演奏者もしきりにサインをプロンプターに送って要求を出してきます。また、演奏者同士でサインを交換しあったり、途中で指示の主導権をプロンプターが特定の演奏者にゆだね、かと思うとそれを奪い返したりするなど、双方向的な要素があるのが特徴。サインの見落としなどのハプニングもあったりしますし、どのように展開していくのか分からないスリルを常に感じることができます。
楽器の指定が特にないので、毎回メンバーによって大きく音楽性が変化するのもコブラならでは。この日のラインアップは以下の通りでした。

巻上公一(プロンプター、オーガナイザー)、岩見 継吾(ベース)、大熊ワタルクラリネット)、金子泰子(トロンボーン)、クラムボン ミト( ベース)、纐纈雅代(サックス)、斉藤良(ドラムス)、四家卯大(チェロ)、柴田奈穂(バイオリン)、村上巨樹(ギター)、柳家小春(三味線)、吉森信(ピアノ、シンセサイザー)、ッタッタ(マンドリン 大正琴

ジャズあり、タンゴあり、小唄ありと多彩なジャンルからのミュージシャンがずらりと揃って壮観ですが、いずれも柔軟な音楽性と冒険心を持っていることが共通しています。巻上公一は体全体を使って指示の出し、それにすばやくメンバーが反応していきます。観客にはカードやサインの意味は一切知らされないので、初めのうちは何が何だかわからないまま音楽が進行していくのにとまどうのですが、だんだん「あ、このサインは多分こういう意味じゃないのか?」とおぼろげながら見えてきて、そこからがぐっと面白くなるんです。例えば「なんだかッタッタさんと大熊さんが何かたくらんでる感じだなあ・・・お、柴田さんが手をあげてる。巻上さん気づいたかな?あ、村上さんがどうやらここは仕切るらしい・・・」といった具合です。そうなるとなんだか自分も一緒に演奏に参加しているつもりになるんですね。耳と目と頭をフル回転させる快感があります。
この日の演奏には即興演奏ならではのスリルはもちろんのこと、ユーモアもふんだんに含まれていたのが素晴らしかったです。不意に柳家が「おてもやん」の一節を歌ったら、四家がなんとサックスで「アメイジング・グレイス」のフレーズを奏でて対抗したり、ッタッタと大熊による謎のシャウトが巻上の指示でメンバー全員に伝染したり・・・。とにかくメンバー全員がとても楽しそうでした。初めはやや緊張しているかのように見えた柴田も中盤では大きく飛び跳ねて拍手喝采を浴びたり、クラムボン ミトは終始笑みを浮かべながらファンキーなベース・リフを連発したり等々、どのメンバーも自分の個性を存分に発揮していました。個人的には村上巨樹の「蛍光灯ギター」を初めて観ることができたのが嬉しかったですね。
途中15分の休憩を挟んでたっぷり2時間以上の熱演でした。「コブラ」のCDは何枚かもっていますが、やはり実演に接してこそですね。DVDが出れば、このユニークなシステムの魅力がもっと伝わるように思いました。