鈴木慶一『The Lost Suzuki Tapes Vol.2』

The Lost SUZUKI Tapes 2

The Lost SUZUKI Tapes 2

Vol.1の再発にあわせてリリースされた鈴木慶一のデモ音源集。Vol.1の方はあるていど整ったアレンジが施された楽曲が多く含まれていたのですが、こちらは歌詞もついていない曲や、ラフな音質で録られたギターやピアノだけのシンプルな弾き語り形式の曲がほとんど。しかし、それだけにずっと彼の音楽を追い続けてきたファンにとっては、鈴木慶一のコアな部分に触れたような思いを抱かせてくれる、生々しい魅力があるアルバムとなっています。
野宮真貴のデビュー・アルバムに収録されている「ウサギと私」、杏里の「エスプレッソで眠れない」といった他人への提供曲のデモも貴重な音源ですが、私が一番興味深く聴いたのは91年のソロ作『SUZUKI白書』に収録された曲のデモの数々。特にコードが変更された「GOD SAVE THE MAN」やサビのメロディーが大きく変わった「サラダボウルの中の二人」は、明らかにここで聴けるデモの方が慶一のエッセンスが発揮されている素晴らしい出来栄え。当初の予定通りアンディ・パートリッジのプロデュースで完成していたら、きっと慶一のポップ・センスが全開になった大傑作になっていたのに・・・と思わざるをえません。
聴き返す度に上のような、様々なことを考えさせる刺激的なアルバムですが、もちろんまだ公開されていない音源は山ほどあるでしょう。そしてその中には従来の慶一のイメージを覆すような刺激的なものがあるのではと私は推測しています。たとえばエリック・ドルフィーの死後に発表された『アザー・アスペクツ』や、マジカル・パワー・マコが1972年から1975年にかけて録りためていた音源を集めた『HAPMONIYM』のような・・・。いつの日かそんな慶一ワールドの奥深さが明かされる日を楽しみに、これからの活動を追い続けていきたいと思います。