ムーンライダーズ『Ciao!』

Ciao!

Ciao!

ムーンライダーズについては、無期限活動休止宣言直後に思ったことを綴ってからこれ以上何かを付け加える気が起らず、またラスト・ツアーを観ることもできなかったので、心の中でピリオドを打つことができない状態が続いていたのですが、配信とはいえルーフトップ・ギグを観ることができて、ようやく6人の今後の行く末を楽しみにできるようになりました。
この『Ciao!』はまだ活動休止に対する自分の中でのふんぎりがきちんとついていない最中にリリースされました。歌詞を読むとそこかしこにこれが“最後”であることを匂わせる言葉がちりばめられていたのですが、サウンドの方はといえば一聴、2001年作『Dire Morons Tribune』を彷彿とさせるカオスぶりに驚かされました。前作『Tokyo 7』が明瞭なポップ・アルバムだったので、ある程度凝ったものが出てくるとは予想していたのですが、まさかここまでとは。しかし繰り返し聴くにつれて、混沌の中に埋もれていたポップな側面がぐっと浮上してきました。それにつれて、『Dire Morons Tribune』だけではなく、他のアルバムとの共通点もあれこれ思い浮かぶようになってきたのです。一人2曲体制であることは『Animal Index』だったり、無国籍感とバラけた感覚が『Moonriders』を思わせたり・・・。そして、そんな歴史を踏まえつつ、今なおアグレッシヴなバンドとしてのパワーを見せつけたアルバムとなっていることに改めて感嘆しました。鈴木慶一の謎と深み、鈴木博文の抒情、白井良明のエネルギー、岡田徹のチャーミングなポップ感覚、かしぶち哲郎のロマンティズム、武川雅寛による多彩な色づけとエスニック感覚。これらがひとつのアルバムにぶちこまれ、ユーモアをまぶされながら、幾重にも屈折して力強く迸ることから生まれる独自の音楽。ムーンライダーズはあくまでムーンライダーズであることを如実に示した傑作であると今では思っています。35年間お疲れ様でした。次のレボルーションの時にまた復活してください!