『REGGAE INTERPRETATION of Kind of Blue』

REGGAE INTERPRETATION OF Kind of Blue

REGGAE INTERPRETATION OF Kind of Blue

須永辰緒の肝いりでCD化されたアルバム。ジャケットやタイトルではっきりと分かるとおり、マイルス・デイヴィスの名盤『カインド・オブ・ブルー』をまるごとレゲエ・ヴァージョンにしたものです。ニューヨーク州立大学の音楽教授ジェレミー・テイラーがニューヨークにジャマイカのミュージシャンを集めて録音されたとのことですが、参加したミュージシャンの詳細は明らかになっていません。

マイルスを他の音楽ジャンルに引き寄せてカヴァーする試みとしては、近年ではボブ・ヘルデンによる『マイルス・フロム・インディア』や『マイルス・エスパニョール ニュー・スケッチ・オブ・スペイン』があります。これらのアルバムは決して出来が悪いわけではないのですが、どこか物足りなさが残るものになっていました。ないものねだりかもしれませんが、マイルス特有のクールな抒情性がそれらには欠けているように思われてならなかったのです。

ところが、一見“クールな抒情性”からは遠いと思われるレゲエ・アレンジをほどこした本作が、かなりマイルスのリリカルさ、クールネスを残した仕上がりになっていたのですから驚きでした。『カインド・オブ・ブルー』をレゲエに引き寄せるのではなく、レゲエ側が寄り添うようなサウンド・プロダクションになっているのがその一因でしょう。特に「ソー・ホワット」なんて限りなく完コピに近い仕上がり。それがかえってオリジナルの魅力に新しい光をあてた格好になっているのですね。後半に収められたダブ・ヴァージョンも曲の雰囲気を壊すようなエフェクトはなされていないのですが、物足りなさは感じさせませんでした。