10/9 横浜ジャズプロムナード

「横濱ジャズプロムナード」は1993年からスタートした街をあげての一大ジャズイベント。これまで私は行く機会がなかったのですが、今年は出演者リストにあったヒカシューとSalle Gaveauに惹かれて、ようやく行くことにしました。

まずは12時に関内小ホールでヒカシュー。“テクノ御三家”といわれていた頃から知っていたバンドだし、巻上公一の初期ソロ「民族の祭典」「殺しのブルース」は愛聴盤だったのですが、ライヴはこれまで未体験でした。
ヒカシューのメンバーは何度かの変更を経て、現在は巻上公一三田超人坂出雅海清水一登佐藤正治の強力な布陣となっています。現在の彼らのライヴの様子はYouTubeである程度予習をしていたのですが、やはり実際に観ると違います。即興演奏によるオープニングから、途中にMCを挟んだ「生きること」や「入念」などフリーでエネルギッシュな演奏に感嘆しました。シベリア・ツアーから帰国したばかりだというのに、疲れはみじんも見せないパフォーマンスでした。今年で横濱ジャズプロムナードへの参加は3回目となるそうですが、今の彼らの音楽は“フリージャズ”ならぬ“フリーロック”と呼びたいですね。ナンセンス寸前の歌のパート(巻上によると「パタフィジックソング」)と、そこから展開される自由なインプロヴィゼーション。メンバー全員のもつ個性が存分に発揮されながらも保たれるバンド感が見事でした。巻上はヴォイス・パフォーマンスはもちろん、演奏姿がそのままステージ・アクションに直結しているテルミン演奏、口琴コルネット、尺八とフル回転。こちらが演奏姿を観たいと思っていたことを全部やってくれたので大満足です。最後は代表曲のひとつ「びろびろ」で締め。

続いてランドマークホールに移動して、もうひとつのお目当て、Salle Gaveauです。到着したときは最終の音合わせをやっていました。一口に幅広い、というだけでは済まされない程多彩な活動を展開しているギタリスト、鬼怒無月ピアソラへのオマージュとして結成したのがSalle Gaveauです。ランドマークホールは観光スポットにある、お洒落な雰囲気をもつ会場だけあって、客席の年齢層は比較的高かったように見えました。そんな中にあって始まった彼らの演奏は、ピアソラの音楽のもつシャープさとエレガンス(もちろん、旧来のタンゴのそれとは異なる)を体現しながらも、それだけにとどまらない輝きを放つものでした。繊細さの中に密かに爆発寸前の野性を潜ませているかのようなスリルが底に流れているんですね。メンバーそれぞれが質の高い演奏を披露していたのですが、特に喜多直毅が奏でるヴァイオリンの豊かな表現力に惹かれました。もちろん鬼怒のギターも素晴らしい。エレキ・ギターでソロをとると、そこはかとなくプログレな雰囲気が出てくるのが魅力でしたね。

最後は同行者のリクエストでシャッフル・デーモンズ。再び関内ホールへ。といっても今度は大ホールです。
シャッフル・デーモンズは80年代なかばにカナダで結成されたグループ。力強く、パンチの利いたビートをただきだすリズム・セクションに、アルト、テナー、バリトンのサックスがブロウしまくる、明快なカッコよさがストレートに伝わる音楽でした。楽器の鳴りが素晴らしかったですね。会場を練り歩いたオープニングとエンディング、ところどころで披露した歌やラップ、時にコミカルなパフォーマンスも見せるなど、良質のエンターテイメントを堪能しました。

本当はこの後もう一公演見たかったのですが、体調がすぐれなかったのでやむを得ず断念。今年は後半の1日だけでしたが、来年は2日ともフルに見てまわろうかと思っています。