バート・ヤンシュ『ムーンシャイン』

ムーンシャイン(紙ジャケット仕様)

ムーンシャイン(紙ジャケット仕様)

帰宅してネットをチェックしたら、まっさきに飛び込んできたのがバート・ヤンシュの訃報でした。享年67。まだ若すぎる死といってもいいでしょう。ブリティッシュ・フォーク伝説のグループ、ペンタングルでの活躍を初めとして、多くのミュージシャンに影響を与え続けた存在でした。ジミー・ペイジやドノヴァン、ニール・ヤングノエル・ギャラガージョニー・マー・・・皆バートを心から敬愛していたのです。近年のソロ活動やホープ・サンドヴァルとの共演など、派手さはないものの、順調な活動を展開していただけに、本当に早すぎる死が惜しまれてなりません。

今回取り上げた『ムーンシャイン』は1973年に発売されたソロ・アルバムで、続く『L.A.ターンアラウンド』と共に、最初に彼の音楽に接するにぴったりの作品といえるでしょう。カントリー・ロック風に仕上がっている『L.A.ターンアラウンド』も素晴らしい作品なのですが、今宵はよりブリティッシュ・トラッド色が濃いこちらで彼をしのびたいと思います。
ダニー・トンプソンがプロデュースをてがけ、アレンジにはトニー・ヴィスコンティが参加。エヴァン・マッコールのカヴァー「愛は面影の中に」では当時ヴィスコンティの奥さんだったメリー・ホプキンとデュエットしているのみならず、チャーリー・ミンガスとの活動で名高いジャズドラマー、ダニー・リッチモンドが参加しているなど、彼のアルバムの中では比較的多彩なサウンドとなっています。しかし、決して華美に流れることはない、渋い味わいを保っているのがバートならでは。シンプルに弾き語りで奏でられる「トゥー・コルビーズ」を聴けば、彼のヴォーカルとギターが音をぐっと引き締めていることが実感できます。アルバム・ジャケットも含めて、彼の代表作とよぶにふさわしい名盤でしょう。改めて、心よりご冥福をお祈りいたします。

Bert jansch - moonshine