『Buenos Aires Session Vol.#1 Chichipio』

Buenos Aires Session Vol.#1 Chichipio

Buenos Aires Session Vol.#1 Chichipio

ROVOの勝井祐二山本精一がアルゼンチンに渡り、フェルナンド・カブサッキ、モノ・フォンタナ、サンチャゴ・ヴァスケス、アレハンドロ・フラノフとセッションした記録を収めた作品です。
今でこそ「アルゼンチン音楽最高!」なんてあちこちで書いている私ですが、2005年に発表されたこのアルバムはつい最近まで見事にスルーしていました。勝井・山本がいちはやくフアナ・モリーナ等に注目し、“アルゼンチン音響派”というタームでそれらの音楽を紹介していたことは知っていたし、フアナのアルバム等には耳を通していたのですが、当時はより深く踏み込むところまではいかなかったのですね。改めてメンバーを見ると、皆、現在の愛聴している人ばかりじゃないですか。フェルナンド・カブサッキなんて元をただせばロバート・フリップの高弟ですよ。それなのにずっと聴かずにいたのですから、もったいないことをしたものです。自らの不明を恥じるばかり。

それはともかく、ここで聴かれる音楽はさすが、ありきたりの即興セッションにはなっていません。テクニックを徒に競い合ったり、過度に緊張感をもった実験的な雰囲気になったり、和気あいあいとしたジャム・セッションになったりといったところからは遠く離れ、優れた音楽家達が互いの発する音や、音楽全体の流れを敏感に感じ取りながら、自らの音を紡ぎ合出しているさまがどの部分からも感じ取れます。出るところはでて、引くところは引くことを全員がわきまえているから、音楽の流れに自然と緩急がつき、音と音との空間が息づく。その結果おのづとそれぞれのメンバーの持つ幅広い音楽性が浮き彫りになってくるのです。続編の「Izumi」と併せて楽しみたいアルバム。