フランチェスコ・トリスターノ『bachCage』
- アーティスト: トリスターノ(フランチェスコ),ケージ,バッハ,トリスターノ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2011/05/25
- メディア: CD
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このアルバムのコンセプトは題名ですぐ分かる通りバッハとジョン・ケージをひとつのアルバムの中で聴かせることですが、クラシックの大名門レーベル、ドイツ・グラモフォンからのデビューだからといっても臆しているところはありません。それどころか、プロデュースにはテクノ界の巨匠、モーリッツ・フォン・オズワルドを起用。アルバム全ての曲を違った編集機材、ソフトウェアを使用して制作し、音色や響きに入念な編集作業を行うことで、それぞれの曲にそれに合ったサウンドを与えながらも、アルバムとしての統一感をもたせることに成功しています。
曲の流れも実によく考えられていて、たとえばアルバムの前半部。冒頭の自作曲「イントロイト」からバッハのパルティータ第1番、そしてケージ「ある風景の中で」につながっていくのがとても自然に感じられるのですね。もちろん、トリスターノのピアノ演奏も魅力的。パルティータなんてテンポの取り方などは独特なれど、その響きにはグレン・グールドを思わせる美しさがあります。かなりグールドを研究しているのではないでしょうか。
グレン・グールドが亡くなって、もう30年近くの月日が流れましたーが。彼の人気は衰えることを知りません。それどころか、ここに来てグールドを論じた本が立て続けに刊行されるなど、むしろ盛り上がってきたような印象すら受けます。もし、今の時代にグールドが生まれてきたらどんなピアニストになっていたのかを時々考えることがありますが、フランチェスコ・トリスターノはその回答のひとつといえるかもしれません。今後の歩みにも注目していきたいピアニストです。