Jakszyk, Fripp and Collins with Levin and Harrison -King Crimson Projekct-『A Scarcity of Miracles』

ア・スケアシティ・オブ・ミラクルズ

ア・スケアシティ・オブ・ミラクルズ

エイドリアン・ブリューがうっかりダブル・ブッキングなんてしちゃったせいでフリップ御大がへそを曲げ、キング・クリムゾン本体の活動は長らくごぶさたになっています。その代わりというわけでもないのでしょうが、“キング・クリムゾン・プロジェクト”と銘打たれた新しいユニットのアルバムが届けられました。そういえば90年代にもプロジェクト・シリーズとして、いろいろリリースされたことがあったわけですが、それらとは特に関係はなさそうです。
メンバーはフリップ翁に加えてジャッコ・ジャクスジク、メル・コリンズ、ギャビン・ハリソン、トニー・レヴィンの5人。中心となったのはフリップとジャッコのようですが、メル・コリンズの参加が目を引きます。なによりもクリムゾンの名前を持ちだしてきたユニットなのですから、現在フリップ翁が見据えているキング・クリムゾンの青写真が描かれているのではないか、と期待しながら聴いてみたのですが・・・これはまた、随分と滑らかで聴きやすい音楽じゃないですか。うーん、これがクリムゾンの今後進む道なんですかねえ?これはやはり、キング・クリムゾンとは完全に別物だと考えた方がよさそうです。またしても詐欺師フリップにだまされたのでしょうか。クリムゾンとつければ何でも買うと思ったら大間違いだぞ!と言ってやりたいけど、現にこうして買ってしまっているのですから完全にフリップ先生の掌の上で踊らされていますね(^^;)。
それにこのアルバム、なんだかんだいってそれなりに楽しめるのですよ。ジャッコのヴォーカルには70年代クリムゾンにあった叙情性をかいまみせてくれるし、ブリューより好みというファンは多そう。そのヴォーカルによって歌われる親しみやすいメロディーに、メル・コリンズがあくまで穏やかなオブリガードを加えていき、要所要所をフリップ翁のギターが独特の味つけを施しています。いわばクリムゾン流AORといったところでしょうか。それにしてもフリップ翁の音楽に“メロウ&マイルド”を感じる日がくるとはなあ。これはこれで新境地には違いない。このプロジェクトにフリップ翁がどこまで乗り気だったのか、今後も続けるつもりなのか興味津々です。