シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団『寄港地/イベール:作品集』

イベール:作品集 寄港地

イベール:作品集 寄港地

フランスの作曲家、ジャック・イベール。活躍した時代が12音や無調などの前衛真っ只中だったり、また、ミヨーやオネゲルとも親交があったにもかかわらず、フランス6人組からは外れてしまって、孤立しているように見えてしまっているのが災いしたか、少なくとも日本ではポピュラーな人気を得ているとはいいがたいものがあります。
しかし、彼の洒脱で洗練された小粋な音楽はもっと知られていても不思議ではありません。クラシックに深みや重さを求める向きからは軽く思われてしまうかもしれませんが、このいかにも“パリのエスプリ”を体現したような作風には単なるマイナー作曲家として捨て置くには勿体ない魅力があります。このアルバムは彼の管弦楽曲の代表曲である「寄港地」を中心としてまとめられた作品集。「3つの交響的絵画」と副題のついた「寄港地」は、イベールがローマ留学の際に行った地中海地方の印象を音楽にしたもので、彼の作品の中では比較的知名度があります。ラヴェルの「スペイン狂詩曲」あたりが好きなら、この音楽も同様に楽しめるはず。続く「フルート協奏曲」はこのアルバムの中で私が最も気に入っている曲で、プーランクあたりと共通する、洗練されていながらもどこか霊的で澄んだ響きに惹かれますね。他にも交響組曲「パリ」やルイヴィル協奏曲などが、フランスものを得意とするデュトワモントリオール交響楽団のコンビによって生き生きと演奏されています。

ただし、実のところ私がイベールの音楽で最も愛聴しているのは、数年前ブリリアント・クラシックスから出た室内楽曲集(完全版)なんですね。ドビュッシーにもひけをとらない精妙な響きをもつ音楽がそこにはあります。「寄港地」だけしか知らなかった人には、ぜひ一度は耳にしてもらいたいですね。