アポジー&ペリジー『超時空コロダスタン旅行記』

超時空コロダスタン旅行記(紙ジャケット仕様)

超時空コロダスタン旅行記(紙ジャケット仕様)

戸川純の初期作品がBlu-specCDで再発されました。ゲルニカ『改造への躍動』や『玉姫様』など強烈な個性をもったアルバムがずらりと並びますが、個人的な目玉はこのアポジー&ペリジーです。1984年にYENから突然リリースされた謎の企画物ですが、当時のYENレーベルの精鋭が集った充実した作品となっています。
松本隆-細野晴臣の黄金コンビによる楽曲を戸川純三宅裕司が歌った「月世界旅行」と「真空キッス」はテクノ歌謡の名曲としてつとに評価が高く、様々なアンソロジーにも収録されていますが、実はそれ以外の曲こそが本作の聴きどころ。なぜか橋本みゆきハード・ロック調のサウンドで歌う「クイーン・グレイシャー」はアルバムの中で激しく浮いているのですが、それ以外はYENならではのテクノ・ポップを堪能できます。上野耕治のならではの摩訶不思議な展開をもった「プロフェッサー・バーセク」や、そのまま自分のソロに入っていてもおかしくないクオリティをもったコシミハルアニマロイド・MV2」だけでも充分なのですが、なんといってもテスト・パターンの「HOPE」が素晴らしい。テクノ・ポップ特有のキュートさとフランス音楽に通じる洗練された感覚を併せ持った名曲ですね。彼らが唯一残した名盤『アプレ・ミディ』もリマスタリングで再発されることを願ってやみません。