細野晴臣『HoSoNoVa』

HoSoNoVa

HoSoNoVa

ここ数日、朝目覚めたときや仕事から帰ってちょっと一息ついたときなど、生活の中のちょっとした時間に、お茶を飲むような感覚でこのアルバムを聴いています。巨匠と呼ばれてもおかしくない実績を積んだ人のアルバムがこんなに肩の力を抜いて楽しめるというのは、よく考えてみたらすごいことなのかもしれませんが、難しく考えるだけ野暮というものでしょう。『HOSONO HOUSE』に通じる親密な雰囲気を湛えつつも、細野が今に至るまで通過してきた数々の音楽のうまみがさりげなく溶かしこまれていて、彼にしかつくれない懐の深い音の場が広がっているのです。細野のヴォーカルの素晴らしさももちろん忘れてはいけません。低音の魅力で聴かせる人がめっきり減ってしまった現在、こうした安心できる声で歌ってくれる人がいるということはどれほど貴重なことか。静かにこの音楽に耳傾け、親しい友人とその歓びを分かち合いたいと思わせる点で、私にとってこのアルバムはカルロス・アギーレの親戚のように思えます。いつか2人が共演するところを見てみたいですね。

悲しみのラッキースター