ギル・エヴァンス『ニュー・ボトル・オールド・ワイン』

最近ジャズの名盤が続々とリマスタリングされて1000円以下で再発されていますが、これもその中の1枚。ギル・エヴァンスが1958年に発表したアルバムです。
ギル・エヴァンスというとまず思い浮かぶのはやはりマイルス・デイヴィスとの一連のコラボレーションでしょう。次いでヴァーヴに残した名盤『ギル・エヴァンスの個性と発展』、インパルスの『アウト・オブ・ザ・クール』といった辺りでしょうか。ロック・ファンならジミ・ヘンドリックスの曲を取り上げたアルバムや、電気サウンドを導入した『スヴェンガリ』などの作品、晩年のマンデー・ナイト・オーケストラなどを愛する人が多そうです。
こうした中では、この『ニュー・ボトル・オールド・ワイン』はこれまであまり注目されていなかったような印象があります。しかし、これはいささかも作品の質が劣ることを示すものではありません。全編躍動感溢れる演奏ぞろいなのですが、その主な原動力はアート・ブレイキーと当時はまだ知名度が低かったキャノン・ボール・アダレイによるもの。とくにキャノン・ボールの気持ちの良い快演が心地よく、ギルが生み出すカラフルな音の雲の中から飛び出して奔放に吹きまくる様は痛快です。ルイ・アームストロングチャーリー・パーカーといったギルより前の世代の代表曲を中心に選曲されたこのアルバムは、これまでギルの作品を難解と思って敬遠していた方がいるとしたら、その人にこそぜひ手にとってもらいたい明快さとギルならではのカラフルなサウンドが楽しめる好盤なのです。