マイク・オールドフィールド『プラチナム』

プラチナム(紙ジャケット仕様)

プラチナム(紙ジャケット仕様)

1979年作。『チューブラー・ベルズ』に始まる初期三部作と大作『呪文』を経たマイクが新たな方向へ歩を進めた1枚。LPではA面に当たる部分を大曲1曲で占め、B面には小品を配するという構成は80年代の作品の基本フォーマットとなりました。このアルバムではマイクなりのアメリカン・ミュージックへのアプローチがうかがえるのが面白いところで、大作「プラチナム」でのディスコ・ビート導入や、ジョージ・ガーシュイン「アイ・ガット・リズム」をカヴァーするなど、これまでの彼の音楽からは想像できない展開は、発売当時多くのファンがとまどったことでしょう。これまでの作品に漂っていた神秘性はここに来て完全に影をひそめましたが、よく聴くとそこかしこにマイクならではの牧歌的フレーズがちりばめられていて、根っこの部分は変っていないことがわかります。6曲目の「サリー」と題されている曲が実は初回盤以降「イントゥ・ワンダーランド」になっていることは熱心なファンなら周知の事実(歌詞の一部を当時のヴァージン・レコード社長だったリチャード・ブランソンが気に入らず、強引に差し替えさせた)。オリジナルの「サリー」はまだ聴いたことがないのですが、かなりの佳曲ということなのでいつか本来の構成のアルバムを聴いてみたいですね。7曲目の「パンカディドル」はリコーダーを模したシンセの音色がほのぼのメロディーを「マイ・シャローナ」のリズムに乗せて奏でるという曲で、『オマドーン』前半部のセルフ・パロディにも聴こえますが、当人はパンクへのアンチ・テーゼとしてつくったとのこと。風変わりな曲ですがどこか憎めない愛らしさがあります。

Mike Oldfield - Montreux 1981 - Punkadiddle

1981年、モントルー・ジャズ・フェスティヴァル出演時の演奏。熱演の後のアンコールなのでマイクを含めたメンバーのほとんどが半裸というワイルドな状態。音を消して画像だけ見ているとハード・ロックフュージョンのバンドとしか思えませんが、実際に弾かれるのはフォークダンス的なほのぼのメロディーなのでいつ観てもそのギャップに笑ってしまいます。でも中間部から延々と弾きまくるマイクのギター・ソロは文句なしにカッコいい!後半での茶目っ気と観客の熱狂ぶりも見所です。残念ながらこの動画には映っていませんが、この日のステージにはマギー・ライリーも参加していました。