第68期名人戦第4局 羽生名人対三浦八段

先程名人戦が終局しました。結果は羽生名人の勝利。これで4連勝のストレート防衛を達成しました。対局開始時の時点で羽生名人の13連勝という対戦成績だけを見るならば順当な結果といえるのかもしれません。しかし、実際はかなり羽生名人にとって苦しい闘いが続いたと思います。第1局、第3局は名人が負けていてもおかしくない将棋でした。本局も終盤になって羽生玉がかなり危険な状態になったときがありました。羽生名人は4連勝どころか、1勝3敗で名人位失冠のピンチになっている可能性もおおいにあったのです。しかし現実はストレート防衛。おそらく両者の実力は対戦成績程は差がないのでしょうが、そのわずかな差が、残酷なまでにはっきりとした結果として出てしまうところに勝負の厳しさを感じずにはいられません。全局を通して、体をねじらせ、目を充血させながら必死に手を読み続ける三浦八段の姿が印象的でした。本局最終盤でも、頭を抱え、手を震わせながらも必死に羽生玉に迫ろうとしたのですが、ついに届きませんでした。初級者の私ですら、これはもう羽生玉を捕まえるのは無理だと思えたところでも王手を続けたのは、投げるに投げられない無念さが伝わってきて見ていて切なくなってしまいましたよ。棋界の武蔵とも称された三浦八段、最後はまさに刀折れ、矢尽きた状態で羽生名人の前に敗れ去りました。
それにしても羽生名人の勝負強さよ。126手目に攻防の角を打たれて、やむを得ない受けから馬をつくられたときは攻めが切れたかと思ったのですが・・・。そこから控え室の深浦王位が驚いた意表の桂跳ねから、焦点の歩を打って三浦八段をのけぞらせ、要の馬を取りきり、さらに取ったばかりの角で厳しく三浦玉に迫った一連の流れには唸ってしまいました。ずっと三浦八段優勢と見ていた深浦王位に「ここに来て、羽生名人の方が勝っている気がしてきました」と言わしめ、以後あっさりと必至をかけてしまったのですから。その深浦王位は棋聖戦で羽生棋聖に挑みます。この両者の戦いも今から楽しみですね。ともあれ、羽生名人、おめでとうございます。三浦八段、残念でしたが強さはしっかりと伝わってきました。これからもがんばってください!