羽海野チカ『3月のライオン』第4巻

3月のライオン 4 (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン 4 (ヤングアニマルコミックス)

9時前に帰宅して、慌ててTVのチャンネルをNHKのBS2にすると、丁度羽生名人対三浦八段による名人戦第1局の最終盤が画面に映りました。盤に覆いかぶさるような姿勢の羽生名人に対して、時間に追われながらも、扇子を手に時々あらぬ方を眺めながら読みにふける三浦八段。羽生名人の玉もかなり追い詰められていましたが、どうやら羽生名人勝勢のようです。放送時間終了5分前、扇子を落とした三浦八段が駒台に手をやって投了の意志を告げ、終局。2日間にわたる熱戦は羽生名人に軍配が上がりました。勝った名人、負けた三浦八段共に憔悴した表情で言葉を発することができません。そんな2人の表情を映しながら放送終了となりました。
そんな名人戦第1局2日目と同日という、これ以上ないタイミングで刊行された「3月のライオン」最新巻。表紙もついに棋士の姿が登場しまごうことなき将棋マンガの様相となりました。この巻は宗谷名人対島田八段のタイトル戦「獅子王戦」の戦いがメインとなっています。宗谷名人は実績だけなら羽生名人レベルの存在として描かれているのですが、いかんせん登場してまだ日が浅いので、神秘的な面ばかり際立ってその人物像はまだ漠然としたままです。従ってこの巻の主役は堂々と表紙を飾った島田八段。おそらくモデルとなったのは木村八段で、そこに深浦王位の故郷への思いの強さを加えたという感じなのですが、そんなことを知らなくても、ここで描かれた苦闘する島田八段の姿には引き込まれずにはいられないでしょう。どんなに苦しむ姿が描かれていても読後感が良いのは羽海野マンガの大きな魅力で、自然に作中人物に共感しながら読み進めることができました。