富樫雅彦『エッセンス』

エッセンス(紙ジャケット仕様)

エッセンス(紙ジャケット仕様)

名作『スピリチュアル・ネイチャー』の延長線上にある集団即興音楽集。正直、最初に聴いたときはなんだかボンヤリしているアルバムだなあ・・・なんて思っていたのですが、久しぶりに聴き返したら“ボンヤリ”と感じていたところが“ファンタジック”になっていましたよ(^^;)。『スピリチュアル・ネイチャー』ほどカチッとつくりこんでいない分、アンサンブルの自由度が高くなっていてかつ幻想的な雰囲気も漂うユニークな音楽になっています。鈴木重男と中川昌三によるフルートの音色が全体のイメージを決定づけているように思えますね。そして要所要所での富樫のパーカッション・ソロの切れ味が全体をぐっと引き締めています。3曲目「伝説」と続く「香(エッセンス)」では雅楽、邦楽に接近した響きにもアプローチ。この辺りは聴き流していたらよさがわからないですね。「風向き」は富樫夫人がワイングラスを撫でて出した音に富樫、豊住、横山のパーカッションが絡むという異色作ですが、今聴くとアンビエントに通じるものがある美しい音楽と思いますね。もっと最初からきちんと音に向かい合って聴いておくべきだったなあ。