“ヨーロッパ3部作”の直前、78年に発表されたアルバム。
坂本龍一、
高橋幸宏、
後藤次利、
鈴木茂等を起用し、サンバ、
ボサノヴァ色濃い音楽を展開しています。手練のメンバーによる演奏なのですが、本場の
ボサノヴァとは微妙にノリが違うことや時折顔をのぞかせる歌
謡曲的なメロディーがこの作品をユニークなものにしています。もちろん
安井かずみの詞の魅力も忘れてはいけません。同時期の
高橋幸宏『サラヴァ!』や
ムーンライダーズ『
ヌーヴェル・ヴァーグ』に近い雰囲気もありますね。今は和製ボッサはすっかりポピュラーになったし、本場ブラジルに勝るとも劣らない
サウンドを聴かせるものも数多くありますが、加藤の作品に通底している独特な感覚―私の乏しい語彙で表現するなら“小粋さ”と呼びたい感覚―は他の誰にも真似できないものだったと改めて実感しています。