「サンシャイン・スー
パーマン」、「メロー・イエロー」と立て続けにヒットを飛ばし、一躍スターとなったドノヴァンの68年作。どの晩にも聴きたい名盤です(^^;)。ジャケットの衣装や、裏ジャケの
マハリシ・ヨギと談笑している写真を見ると、サイケ/ヒッピー的な音楽を連想せざるを得ないのですが、実際はそれほどサイケではなく(サイケなドノヴァンは次作『ハーディー・ガーディー・マン』で堪能できます)、ポップなドノヴァンとフォーキーなドノヴァンが高い次元で両立しているのです。LPでは2枚組のボックス・セットとして発売され、1枚目が「天国の愛につつまれて」と題されたポップ・サイド。ポップとはいっても
出世作『サンシャイン・スー
パーマン』と比べるとかなり地味で、当時のエピック・レコード社長クライヴ・デイヴィスに「このアルバムからシングルは切れない」と言われたのもさもありなん。とはいえ、ドノヴァンならではのシンプルきわまりないのに不思議と聴きあきないソングライティングは健在。自伝的要素を含む「ジョンは逃げて行く」や「あの日あの時」などは彼ならではの味わい。
エコロジー・ソングの先駆けともいえそうな「おひさま」や、個人的に大好きな「誰かが歌っている」など佳曲ぞろいです。そしてシングル向けにあわててつくった「天国の愛につつまれて」が名曲。
ビートニクスがカヴァーしたことで耳にした方もいるでしょう。絵描きのことを歌ったという、色づくしの歌詞は
ムーンライダーズ「スカーレットの誓い」にも大いに影響を与えているはず。
一方2枚目の「小さな者たちへ」と題されたフォーク・サイドは吟遊詩人、ドノヴァンの真骨頂。ジプシー、
マンドリン弾き、いかけ屋、ショールの未亡人といった多彩な人物が歌われ、カモメ、かささぎ、
カニ、ヒトデといった小動物もたくさん登場。ここで歌われた世界は後年の『HMS』で更に深められます。1枚目以上に地味な
サウンドなのですが、吸引力はこれまでの作品に勝るとも劣りません。中でもライヴでもしばしば歌われた「アイレー島」の物悲しい美しさが絶品です。
Donovan - Isle of Islay (L' Olympia Paris 1970)