ピチカート・ファイヴ『ボサノヴァ2001』

ボサ・ノヴァ2001

ボサ・ノヴァ2001

ミュージック・マガジン増刊「The Groovy 90's 90年代日本のロック/ポップ名盤ガイド」を読みました。フリッパーズ・ギターフィッシュマンズにさして思い入れがない私にとって、90年代の日本のポップ・シーンの象徴となるとピチカート・ファイヴだったんです。でもこのアルバムが出たのは93年。高浪脱退後はあまり興味を持てなくなってしまいましたから、実質3年間の活動でそう印象づけられたわけで、いかに90年代前半の彼らに勢いがあったのかを改めて感じました。いや、80年代の『カップルズ』や『ベリッシマ』も大好きなのですよ。でも“ピチカート・ファイヴ”という存在自体がこのうえなく刺激的なものになったのは、やはり『女性上位時代』から本作にかけての時期だったんです。
というわけで、個人的にはこのアルバムがピチカート最後の傑作。このころの彼らが呪文のように唱えていた「キャッチー」や「スイート」という言葉をコンパクトなポップ・ソングとして落とし込んだような楽曲がずらりと並び、多幸感をまきちらしています。ヒットした「スイート・ソウル・レヴュー」が街中でかかったのを初めて聴いたときは、くすんだ都会の風景ががらりと変わったような気がしたものですよ。「♪ヒナギクの花を髪に飾ろう ふたりのLOVE 永遠に(「ピース・ミュージック」)」なんて歌詞に、「今は60年代かよ!90年代の歌詞じゃねーよ!」とつっこみながらも頬をゆるませたのも懐かしい思い出。せこいリアリズムをふっとばすフィクショナルな輝きに満ち溢れている傑作だと思います。