マイルス・デイヴィス『ダーク・メイガス』

休日だからこそ一気に聴き通せるアルバム。70年代エレクトリック・マイルスのアルバムのひとつで、1974年にカーネギー・ホールで行われたライヴの模様を収録したものです。後年の『アガルタ』『パンゲア』に共通するモチーフが使われていて基本的な路線は同じなのですが、エレキ・ギターが3本という編成のせいもあって“アガパン”(以下『アガルタ』『パンゲア』を略してこう書きます)とは異なる質感があります。アル・フォスターのシンプルなビートに支えられて、のっけから全開で飛ばす前半の「モエジャ」「ウィーリー」に対し、やや緩急がつく後半「タートゥー」「オーンネー」といった内容はドラマティックな展開をみせる“アガパン”に比べてシンプルといえるのですが、全体に感じるなんともいえない禍々しさは『ダーク・メイガス』特有のもの。演奏が盛り上がるほどにカオスに引きずり込まれるような感覚に陥る異形のファンク。当時の観客はどのような面持ちでこの演奏を見守っていたのだろうか。