アリシア・デ・ラローチャ『ラローチャ・プレイズ・バッハ』

ラローチャ・プレイズ・バッハ

ラローチャ・プレイズ・バッハ

ラローチャの追悼企画として再発された中の1枚です。収録曲は「イタリア協奏曲」「フランス組曲第6番」「幻想曲ハ短調」「イギリス組曲第2番」など。遅まきながら初めて彼女のバッハに接したのですが、期待を裏切らない演奏で満足です。バッハについては、私なぞよりもはるかに深い愛情をもって接している地下生活者さんが、先日の日記で「マタイ受難曲」などに顕著なバッハの音楽の「崇高さ」に惹かれると書かれていましたが、ここでの演奏からはそうした「崇高さ」はあまり感じられません。そのかわり、バッハの音楽の包容力と言えばいいのか、自然に聴く人を優しく包んでくれる親しみやすさや広がりに満ち溢れています。それはすなわち、スペインものやモーツァルトの演奏にも感じられる、アリシア・デ・ラローチャの演奏の魅力でもあるのですが―。いつ、どんなときに聴いても裏切られることのない音楽を彼女はいつも奏でてくれたのです。このバッハもそうでした。