カエターノ・ヴェローゾ&ジルベルト・ジル『トロピカリア2』

TROPICALIA 2

TROPICALIA 2

私にとって90年代といえばビョークカエターノ・ヴェローゾの時代だったわけで、この2人が次に何をやってくるか目を離せませんでしたし、実際期待以上の刺激的な作品を次々と連発してくれたのですからたまりませんでした。特にベテランでありながらも野心的な作品を出してくるカエターノにはいつも驚かされたものです。
この『トロピカリア2』は93年作。カエターノが「トロピカリア」という曲を発表してから25年の時を経て、盟友ジルベルト・ジルと共に生み出したアルバムです。当時はトロピカリズモのことはよくわかっていなかったのですが、その刺激的な内容にあっという間に夢中になりました。サンバやボサ・ノヴァは当たり前ですが、カエターノのライヴの定番曲となったクールなラップ・チューン「ハイチ」、“quem?”(誰だ)という単語をサンプリングしまくっててコラージュした「ラップ・ポップクリート」、ジミヘン「明日まで待って」のカヴァーなど、アーティストとしての円熟と未だ失われていない実験精神の絶妙のバランスの上に成立したこのアルバムは今聴いても充分すぎるほど刺激的です。