10/8 フィリップ・アントルモン&寺沢希美 デュオリサイタル@第一生命ホール

書くのに間が空きましたが、フィリップ・アントルモンの公演、10/6のソロ・リサイタルに続き、10/8にはヴァイオリニストの寺沢希美とのデュオ・リサイタルに行ってきました。ソロ・リサイタルの日記にコメントを寄せてくださったIさんと同行です。
この日のプログラムは、以下の3曲。

ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」

フランク:ヴァイオリン・ソナタ

フランスものに挟まれてベートーヴェンという構成。どうせならラヴェルフォーレにしてオール・フランスの方が・・・とも思いましたが、ベートーヴェンの曲も好きなので特に大きな不満はありません。そして、一番いい演奏と思ったのがそのベートーヴェンだったのです。
ソロ・リサイタルの時のピアノはベーゼンドルファーでしたが、この日はスタインウェイ。張りがあって、力強い音色はやはりベーゼンとは全く異なるものでした。最初のドビュッシーはややこのピアノの迫力にヴァイオリンがやや押されていたような印象です。悪い演奏ではありませんが、もしベーゼンだったらもっと両者が溶け合った演奏になっていたのではと思いました。
その点、続くベートーヴェンは曲想にピアノの音色がマッチしていて、ピアノとヴァイオリン、互いの魅力を存分に味わえました。寺沢のヴァイオリンはメロディーの良さを素直に引き出す、衒いの無い、清潔感のある演奏で好感が持てました。
休憩を挟んで最後はフランク。この曲はかの吉本隆明も好きだという(坂本龍一との対談「音楽機械論」でそう発言していました)名曲で、私も大好きな曲です(私はデュメイとピリスの組み合わせによるCDを愛聴。これにはドビュッシーソナタも収録されています)。実演に接するのは初めてでしたが、改めていい曲だと認識を新たにしました。
アンコールは3曲。いずれも寺沢のヴァイオリン・ソロで「タイスの瞑想曲」や「愛の挨拶」など。やはり心地よい演奏で、台風一過の後の青空のような爽やかさがありました。その間アントルモンは客席最前列の端に座って、孫娘の晴れ姿を見守っているような眼差しで寺沢の演奏を聴いていましたよ。残念ながらデュオによるアンコール曲はなし。この日の主役は寺沢であることをさりげなく主張していたのでした。
ソロ、デュオとも凄まじい感動とか衝撃といったものはありませんでしたが、心地よく、上質の音楽に浸る贅沢な時間を過ごすことができました。