8/9 WORLD HAPPINESS 2009@夢の島陸上競技場

どちらかというとインドア・リスナーの私にとって、このWORLD HAPPINESSが初の野外フェス体験でした。7時間という長丁場、暑さに耐えられるか心配だったのですが、天気予報では曇時々晴れということで一安心。ところが会場について開場を待っている間はギンギラギンの陽射しで先が思いやられました。幸い、入場すると雲が空を蔽ってきて、なんとかなりそうと胸をなでおろしたのであります。Left Stageのほぼ最前列にシートを拡げ、お茶を飲みつつ開演を待ちました。
以下簡単な感想を。

mi-gu

コーネリアスのバック・バンドのドラマーとして有名な方ですが、ソロ・アーティストとしても実力派で今年出たアルバムもいい感じでした。自身のタイトで歯切れの良いドラミングを中心に据えた、バッファロー・ドータースーパーカー辺りを連想させるポスト・ロックサウンド。スペーシーなエレクトロサウンドとノイジーなギターが宙を舞う中、時折顔をのぞかせる人懐こいメロディーに惹きつけられました。

1:pulling from above
2:spider
3:Choose the Light
4:from space

pupa

いきなり会場総立ち。えっ、pupaってじっくり座って聴いた方が良いんじゃないの?と戸惑いつつ慌てて立ち上がる。案の定、曲が始まってもほとんどの人がじっとステージを凝視してました。「Let's Dance」と歌ってもあまり踊ってる人はいませんでしたねえ。やっぱりじっと耳傾けたい音楽ですよね。 演奏はもちろん極上で安定感がありました。しかし、pupaの魅力の半分は原田知世で出来ています(^^;)。最初は、幸宏のドラミングに「おお、今日は気合が入ってるんじゃないか」と思ったのですが、すぐに原田知世の可憐さばかりに注意が向いてしまいました。スミマセン。

1:Jargon
2:Unfixed Stars
3:At Dawn
4:Sunny Day Blue
5:Let's, Let's Dance
6:If
7:Creaks
8:Anywhere

コトリンゴ

坂田学らに支えられて、たいへん清楚で初々しいステージを披露してくれました。好感は持てたのですが、“アクのない矢野顕子”とか“刺激のないクラムボン”といわれてしまうと反論が難しいかも。これからに期待ですね。

1:こんにちは またあした
2:colormaker
3:chocolate
4:おいでよ

LOVE PSYCHEDELICO

トイレタイムだったので、遠くから流れてくる音を耳にしただけだったのですが、「NICE AGE」を絡ませてくるなど、場慣れした堂々としたステージングは伝わってきました。

1:Freedom
2:Free World
3:Last Smile
4:Lady Madonna
NICE AGE(Yellow Magic Orchestra)

高野寛

個人的にはここから本番。彼がデビューするきっかけとなったオーディションでは高橋幸宏ムーンライダーズが審査員でいとうせいこうが司会だったそうです。その3人と同じ立場としてステージに登ったこの日の高野寛は短い時間の中、惜しげもなく「ベステン・タンク」「虹の都へ」といったヒット・ナンバーを披露。これがただのファン・サービスに留まらず、今の彼の音楽の充実振りをも伺わせる自信溢れる演奏だったのが感動的でした。見た目は相変わらず華奢ですが、たくましい音楽家になりましたね。それにしてもヒット曲の力というのはたいしたもので、「虹の都へ」が始まったとき、後ろのおそらく十代後半と思われる女の子達が「あー、知ってる!「タッチ」の曲だ!」と大喜びしていました。もちろん間違っているのですが、そんな些細なことよりも彼の曲が世代を超えて聴きつがれていることがうれしかったのです。

1:ベステンダンク
2:Black & White
3:虹の都へ
4:夢の中で会えるでしょう

Y.Sunahara

久々に本格的に活動を再開させた、まりんこと砂原良徳。皆の大合唱で幕を閉じた高野のステージから一転、クラフトワークのライヴ・スタイルによる抽象的な電子音と映像のコラボレーションの世界へ。鳴らされる一音一音がひたすら美しかった王道テクノ・ミュージック。

1:Tomorrow
2:Earth Beat
3:Balance
4:Population
5:Lovebeat

ASA-CHANG&巡礼

今回はASA-CHANGU-zhaanの2人で登場。エスニックな笛の音の反復がトランス的な快感を生み出した1曲目もすごかったのですが、続くインド音楽と御詠歌とエレクトロニカと現代詩の解体と構築を同時にやってのけたような異形空間を生み出した「影の無いヒト」の衝撃たるや、何といえばいいのか言葉がみつかりませんね。

1:Jippun
2:影の無いヒト

スチャダラパー

ASA-CHANG&巡礼による異次元空間を一気に夏フェスらしいエンターテインメントな空間に塗り替えたのはさすが!「マンモスうれピー」の連発などいくつになっても良い意味で茶目っ気を失わない人たちでした。何も考えずに楽しめた、という点では彼らが一番。

1:今夜はブギーバック
2:BD発言
3:Under the Sun
4:Get Up And Dance
5:Hey! Hey! Alright
6:Good Old Future
7:ライツカメラアクション
8:サマージャム'95

THE DUB FLOWER(いとうせいこう,DUB MASTER X,かせきさいだぁ&More)

柔のスチャダラパーに対して剛のTHE DUB FLOWER。スチャダラが残した熱気を引き継ぎつつ、いとうせいこうがストレートなメッセージを屈強なバンド・サウンドに乗せてぶつけてきました。ボブ・マーリーエクソダス」と井上陽水「傘がない」というぱっと見まるでかけ離れた曲を“閉塞状況からの脱出”というテーマでミックスしたのは秀逸なアイディアで、これによっていとうの言葉が単なる説教に終わらず、ポップ・ミュージックとして説得力をもつものになったと思います。

1:からっぽフレーバー
2:傘がない〜EXODUS〜

CHARA

2度目のトイレ・タイムだったので遠くから聴いていたのですが、離れていてもエネルギーが伝わってきたLOVE PSYCHEDELICOに比べると元気が無いように思えてしまいました。曲が始まってもヴォーカルがさっぱり聴こえてこなかったものですから、心配でしょうがありませんでしたよ。ステージ近くで聴いていればそうではなかったと思いますが、なんだか痛々しい感じでした。

1:やさしい気持ち
2:Junior Sweet
3:Breaking Hearts
4:月と甘い涙
5:Call me

グラノーラ・ボーイズ

実にいいタイミングで登場してきた和み音楽。田村玄一、桜井芳樹、キリンジ堀込高樹達が奏でる極上のリラクシン・ミュージックでした。ラストでまさかの武満曲。

1:I can't help it
2:Witchi tai to
3:サボテン
4:どですかでん

ムーンライダーズ

私の周囲の若者達は次に出てくる相対性理論に備えて体力温存モードになってしまったムーンライダーズ(^^;)。慶一はサッカーのユニフォーム姿なのに、かしぶちはスーツといった具合に衣装はてんでバラバラ。「くれない埠頭」や「夢が見れる機械が欲しい」といった名曲もあれば「冷えたビールがないなんて」や「シリコン・ボーイ」のような「盛り上げたいのかもしれないけど、あなた達にはもっといい曲たくさんあるんじゃないの!?」と文句をいいたくなるような曲(ファンの方失礼!)も含めてワイルドにぶっとばす。「ヤッホーヤッホーナンマイダ」や「BEATITUDE」では説明なしにコール&レスポンスを強要してくるから、私の周囲の観客はほとんどついていけずに目を白黒させていましたよ(^^;)。でもその「オレ達はオレ達の好きにやらせてもらうからね」といった姿勢が実にロックでありました。このひねくれたカッコよさがムーンライダーズを知らなかった人に一人でも多く届けば良いのですが。

1:ヴィデオ・ボーイ
2:シリコン・ボーイ
3:Come Up
4:冷えたビールがないなんて
5:夢が見れる機械が欲しい
6:くれない埠頭
7:ヤッホーヤッホーナンマイダ
8:BEATITUDE

相対性理論

おじさん達が熱演を繰り広げている間しっかり休養をとっていたボーイズ&ガールズが一斉にステージ前に押し寄せてきました。実はなんでこんなに騒がれているのかよくわからないバンドです。とはいっても生で見るとなかなか面白かったのも事実。やる気なさげな風情のままロリータ・ヴォイスで歌うやくしまるえつこ嬢は、明らかにわざとそうしていると分かるのですが、ここまで堂々とされるとあざとい、と文句をいう気も失せますね。あっぱれでした。そのため途中つぶやいた「東風(とんぷー)が吹いてきたね」や最後に「チャオ」といったMCが魅力的で、えーと、こういうのをクーデレというんですか?よくワカリマセンが(^^;)。

1:LOVEずっきゅん
2:地獄先生
3:ペペロンチーノ・キャンディ
4:テレ東
5:品川ナンバー

Yellow Magic Orchestra with 小山田圭吾高田漣権藤知彦

いよいよYMO登場。もう本人達の中でYMOは完全に相対化されたのでしょうね。どう名乗ろうと今この3人(+α)でやりたい音楽をやればいい、という自信が伝わってくるようでした。スタートはいきなりビートルズ「ハロー・グッドバイ」でうれしい不意打ち。確かに細野さんも前にこの曲が良いとどこかで言ってたけど、ここで持ってくるか、と大喜びしました。3曲目のファンクな「千のナイフ」も良かった。とにかく幸宏のドラムが絶好調でこのステージどころか、このイベント全体を通してもMVPといってもおかしくない素晴らしさ。細野さんは抑えめな感じでしたが、曲のツボを的確に突いてくるベースでした。こんなリズム隊があれば、教授他のメンバーも悪くなりようがありません。ライヴ・バンドとしてのYMOは今がピークを迎えているんじゃないですか?・・・と思って感想サイトをいくつか回ってみたら去年はもっと良かったらしいのですから、いやはや、やはり怪物バンドですねえ。「チベタン・ダンス」や「ライオット・イン・ラゴス」といった教授ソロ曲をやるのは予想できたのですが、幸宏ソロ曲「Still Walking to the Beat」までやってくれたのは「ハロー・グッドバイ」に続くうれしい不意打ちでした。アンコールの「ファイヤークラッカー」では細野が木琴を演奏。これがまたまた素晴らしい演奏。長時間に及ぶフェスの疲れを忘れさせてくれる最高のステージでした。これまで再々結成YMOにはさして関心がなかったのですが、こういう演奏をしてくれるなら新作アルバムを聴きたいと思いましたよ。

1:Hello, Goodbye
2:Rescue
3:Thousand Knives
4:The City of Light
5:Tibetan Dance
6:Supreme Secret
7:Still Walking to the Beat
8:Riot in Lagos
9:Rydeen 79/07
EC Fire Cracker




・・・ということで、最初から最後まで楽しめたフェスティヴァルでした!