ローリング・ストーンズ『山羊の頭のスープ』

山羊の頭のスープ(初回受注完全生産限定)

山羊の頭のスープ(初回受注完全生産限定)

長きに及ぶストーンズの歴史の中でも特異な1枚。「ドゥー・ドゥー・ドゥー・・・」や「シルヴァー・トレイン」といったファンク、ロックもあるのですが、全体的にはなにかどよんとしたつかみどころの無さがあるんですね。ストーンズのアルバムの1曲目といえば「ブラウン。シュガー」や「スタート・ミー・アップ」のようにイントロ一発でぐいと持っていく“つかみはOK”な強力なナンバーがほとんどなのですが、このアルバムの「ダンシング・ウィズ・ミスターD」はストーンズ的雰囲気は濃厚にありながらも、どこか明快さに欠ける印象です。なのでこのアルバムについての評を見ていると「アンジーとその他の曲が入ったアルバム」のように書かれていることが多い。悪くは無いけど傑作ともいえない・・・といった感じですね。ジャマイカ録音なのにレゲエ色がさっぱり感じられないのも謎です。
しかし、絶頂期に発表されたアルバムだけのことはあって一筋縄ではいきません。確かにぱっと聴くと茫洋とした印象があるのですが、聴き込むにつれて不思議に心を捉えていく中毒性がある楽曲が揃っているのです。私なんて「アンジー」が一番つまらないよなあ、なんて思っていますからね(笑)。気だるい美しさがあるキースがヴォーカルの「夢からさめて」や、ストリングスとミック・テイラーのギターのからみが聴かせる「ウインター」などに今は惹かれます。どちらの曲もニッキー・ホプキンスのピアノがいい味出してますね。また、摩訶不思議なエスニック・サウンド「全てが音楽」もここでしか聴けない楽曲で、ブライアン・ジョーンズのソロの響きとどこかで共鳴しているような気もします。確かにグループを代表する傑作とはいいがたいアルバムですが、彼らの懐の深さを示した、捨て置けない魅力があるといえるでしょう。