柴田ヨクサル『ハチワンダイバー』第11巻

ハチワンダイバー 11 (ヤングジャンプコミックス)

ハチワンダイバー 11 (ヤングジャンプコミックス)

“指さない将棋ファン”の増加に間違いなく大きな役割を果たしていると思われるこのマンガも早11巻目。「独立将棋国家」突破を賭けた右角との対決がメインの最新刊です。右四間飛車の陣形から玉を囲わずにいきなり仕掛けた右角の攻めを真っ向から受けてたったハチワン。盤上でも盤外でも殴りあう、激しい戦いの迫力ある描写はさすがですね。作内の“将棋至上主義”的価値観がますます前面に出てきたのも大きな特徴で、
「世の中ってやつは将棋より価値があるのか?」とか「場所も/道具も/関係ない/常識破りの/金打ちが/人知を/超えた/超世界の扉を開く/その世界は/宇宙ほどにも/広がっていく」などものすごい言葉が登場しています。これらは大げさに見えますが、後者の言葉には「シリコンバレーから将棋を観る」で書かれている羽生名人や佐藤康光九段の言葉と通ずるものがあります。自らも熱心な将棋ファンであり、将棋の広さ、深さを深く実感している柴田ヨクサルならではの言い回しで、この作者の思いが一見荒唐無稽な設定のこの作品に特異なリアリティを与えているのではないでしょうか。