チック・コリア『チルドレンズ・ソングズ』

チルドレンズ・ソングズ

リターン・トゥ・フォーエヴァーやゲイリー・バートンのデュオ作の中にさりげなく収められてきた“チルドレンズ・ソングズ”シリーズ全曲をピアノ・ソロで演奏したアルバムです。ボーナス・トラック「アテンダム」を除く全２０曲で、曲名は「NO.1」「NO.2」といったようにただ番号を記しただけの素っ気ないもの。演奏時間もほとんどが２分以内に終わってしまう簡潔なものばかり。ジャズ風にしようとか、ラテンっぽく行こうとか、現代音楽的なアプローチで迫ろうといった作意を感じることが全くなく、ふと心に湧いたモチーフをそのまま形にしたかのようなシンプルなスタイルだからこそ、そのリリシズムが甘さに流れすぎることなく、適度にひきしまったものになっています。シューマン「子供の情景」やバルトーク「ミクロコスモス」、ドビュッシー「子供の領分」といった曲の隣に置いておきたい、ひそやかだけど愛すべきアルバム。