ここ数年は女優や執筆活動の方が中心になっていたので、このまま歌手としてはフェイド・アウトしていくのかと淋しい気持ちでいたところに届いた新作。何よりも“歌手”としての
キョンキョンのファンの私としては新譜を出してくれるだけで嬉しいのですが、内容の方も期待を上回る充実ぶりなのでした。それにしても不思議な魅力をもった歌手だと思います。決してうまくはないし、特徴を言い表すのは難しい声質なのですが、耳にするとすぐそれと分かる個性があります。特徴が捉えがたいからこそ、クールなハウス・チューンやビッグ・バンド・
サウンドにもするりと嵌ってしまう。歳相応の落ち着きも、アイドルらしい可愛さもさらりと演じきってしまい、なおかつ自然体の印象を与える。これは作家陣としては腕のふるいがいのある素材なのではないでしょうか。ＴＯＫＹＯ ＮＯ.１ ＳＯＵＬ ＳＥＴや上田健二、ＡＳＡ−ＣＨＡＮＧなどの腕利きのアーティストや
リリー・フランキーまでもが協力を惜しまないのも、彼女のこうした魅力に惹かれているからこそと思います。女性の年齢のことをあまり強調するのは失礼ですが、４０歳を超えてなお「
小泉今日子はブギウギブギ」なんて曲に違和感を感じさせないんですよ。あの「
なんてったってアイドル」から「ＫＹＯＮＫＹＯＮはフツー」（『コイズミ・イン・ザ・ハウス』収録曲）ときて今度はブギウギブギですからね。他にこういうことができそうなのは・・・・うーん、
森高千里ならもしかして、とは思いますが、さあどうでしょうか。なるほどこれは“ナイス・ミドル”としかいいようがありません。
