ギル・エヴァンス&スティーヴ・レイシー『パリ・ブルース』

パリ・ブルース

パリ・ブルース

最近取り上げたPerfumeマーキュリー・レヴ、イーノ&バーンといった音楽はほとんど通勤時などの外出時にiPodで聴いていることが多いです。家でかける音楽といえばピアノ曲や、室内楽的な響きをもつ小編成の音楽がほとんど。このアルバムもその中の一枚です。
ギル・エヴァンス最後のスタジオ録音となった本作はビッグ・バンドではなく、ソプラノ・サックスで独自のフリー・ジャズを追求するスティーヴ・レイシーとのデュオとなりました。それぞれのオリジナル曲もやっていますが、ミンガスの曲を3曲(「リンカネーション・オブ・ア・ラヴバード」「オレンジ色のドレス」「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」)取り上げているのが目に付きます。また表題曲はエリントン・ナンバーで、デュオという小編成でありながら、ビッグ・バンド・サウンドを得意としていた人の曲を選曲している辺りがギルらしいといえるでしょうか。とはいえ、ここで聴かれる音楽はデュオでビッグ・バンド・サウンドを表現しよう!といた野心的なものではなく、大変つつましい音楽です。ギルの奏でるエレクトリック・ピアノは明快なメロディーやリズム・パターンを打ち出すことはほとんどなく、控えめな演奏に終始していますし、ソロの場面でも自己主張をすることがありません。レイシーのサックスも吹きまくっているわけではなく、しかもノン・ヴィブラートなので素朴に聴こえる瞬間すらあります。しかし、この派手なところが全くない浮遊感に満ちた音楽にじっと耳を澄ましていると、柔らかな色彩がじんわりとスピーカーの周囲に滲み出てくるような感覚に襲われます。ある意味アンビエントといっても過言ではないかもしれません。