ＷＡＶＥ『ＷＡＶＥ』

ウェイヴ

ＷＡＶＥとは１９８６年に富樫雅彦、佐藤允彦、ゲイリー・ピーコックによって結成されたトリオです。このアルバムを含めて３枚のアルバムを残しており、１ｓｔアルバムでは富樫雅彦、２ｎｄではゲイリー・ピーコック、そして３ｒｄでは佐藤允彦が曲を提供するというユニークなコンセプトを持っていました。
残されたアルバムはどれも高水準の出来ですが、個人的にはやはりこの１ｓｔに愛着を覚えます。古くからの盟友、佐藤はもとより、かつて日本に在住していたこともあるゲイリー・ピーコックも富樫の曲を演奏する際に必要な繊細さ、間の感覚を充分に心得ていることが伝わってくるのです。フリー・ジャズでありながらも、互いがエゴをぶつけあうわけでもなく、さりとて馴れ合いに終始しているわけでもない、伸びやかで爽やかな雰囲気がどの曲からも感じられます。「ヴァレンシア」や「２．５サイクル」のリリカルさも魅力ですが、なんといってもハイライトは富樫の代表曲「スピリチュアル・ネイチャー」。雪が舞い落ちてくるような佐藤のイントロの後は、テーマ、アドリブともゲイリー・ピーコックをフィーチュアしたアレンジで、まるで一幅の水墨画を眺めているような極渋の音楽となりました。その他、富樫の完全ソロ演奏「ハロー・チェリー・ドン」も収められており、富樫の楽曲、演奏を愛する者には申し分の無い一枚です。

おまけ

富樫雅彦 & J.J.SPIRITS - MEMORIES

WAVEの演奏ではありませんが、富樫の演奏姿が見られる貴重な動画。峰厚介、佐藤允彦の叙情的なソロとそれを支える富樫の変幻自在なバッキングを堪能してください。